2011 Fiscal Year Annual Research Report
偏極パルス中性子による空間磁場可視化法の開発と応用
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22604009
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
篠原 武尚 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究員 (90425629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 健二 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 研究副主幹 (40272661)
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Keywords | 偏極中性子 / イメージング / 磁場 / パルス中性子 / 飛行時間分析 |
Research Abstract |
本研究は、偏極パルス中性子のスピン制御法と偏極中性子イメージング法を組み合わせることにより、定量的に空間磁場を可視化する技術を開発することを目的としている。H23年度は、前年度に設計・製作を行った偏極パルス中性子のスピン量子化軸制御機器の性能試験を実施するとともに、空心コイル内部の磁場の定量化、ならびに磁性材料内部の磁場分布の可視化実験を行った。 中性子スピン量子化軸制御素子の性能試験として、素子への電流印加によって中性子スピンの量子化軸が適切に変化することを確認した。素子に印加する電流値は予め数値計算により求めた値と一致し、素子が設計通りに正常に動作することが確認された。また、長波長範囲での外部に存在する微小な漏洩磁場が素子の動作に影響を与えることが明らかとなった。この素子を利用し、中性子スピンの量子化軸をX,Y,Zの3次元で制御し、素子の間に配置したコイルの内部に発生する磁場の強度および方向の定量化を実施し、コイルの設計値と一致する結果を得た。さらに、軟磁性金属箔についてイメージング試験を実施し、内部の磁場分布を画像として取得した。その結果、金属箔の内部には箔の面内に縞状の磁場分布が形成されることが明らかとなるとともに、箔の面に垂直な方向の磁場成分については均一であることがわかった。また、偏極度の波長依存性を解析することにより箔内の磁場強度を定量化することができた。 このように、スピン量子化軸制御素子を偏極パルス中性子を用いた磁気イメージング法に導入することにより、磁場の空間分布を画像として取得するだけでなく、局所的な磁場強度とその方向を定量化できることが実験的に示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年3月に発生した東日本大震災の影響で、本研究を実施する予定であったJ-PARCの物質・生命科学実験施設の復旧作業によりビーム試験実施に時間がかかったため、当初予定していた研究を実施するための期間を十分に確保することが困難であった。しかしながら、機器の性能が期待どおりであったため、概ね順調に研究を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ、中性子スピン制御素子を偏極パルス中性子へ利用することが可能となり、3次元的にスピン解析が可能となった。しかしながら、測定系の周囲の環境磁場の影響が特に長波長中性子において顕著になることが明らかとなり、磁気遮蔽の導入とより高精度な偏極中性子輸送磁場の構築が必要であると考えられた。 今後は、これらの技術の検討を並行して進めるとともに、磁性材料への応用を進める。
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Research Products
(3 results)