2011 Fiscal Year Annual Research Report
固体-液体界面へのイオン照射による新規表面加工・改質法に関する研究
Project/Area Number |
22604015
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小林 知洋 独立行政法人理化学研究所, 山崎原子物理研究室, 専任研究員 (40282496)
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Keywords | ガラスキャピラリー / 集束イオンビーム / 液相中イオン照射 / マイクロイオンビーム / 表面改質 / 金属コーティング / 金属コロイド |
Research Abstract |
当該年度は前年度に制作したシステムを用いて、本研究の目的である新規表面改質法の開発を念頭に固体-液体界面におけるイオンビーム照射研究を行った。前年度確認したポリアクリル酸の堆積現象を利用して、厚膜形成ならびに立体形状形成を試みた。一点を長時間照射し,乾燥後光学顕微鏡にて観察した。その結果ポリアクリル酸は乾燥時の収縮が大きく、剥離や変形のため厚膜や立体構造の構築に適さないことが判明した。シリコン基板と生成物との密着性が悪いのも一因と考えられる。次に吸湿性のないポリアクリロニトリルを生成するアクリロニトリル水溶液中で照射を行った。ポリアクリロニトリル膜は剥離せず厚膜として残存したが、堆積初期段階において核形成を経るとみられ,平坦性の悪い表面となっている。立体構造構築を行うためには,基板との良好な密着性,照射領域内で均一な堆積が得られるモノマー・基板の組み合わせを探索する必要がある。上記の試験と並行して、無電解めっき液中に試料を浸漬し、キャピラリー集束ビームにより照射面に金属を析出させることが出来るか、検証を行った。次亜リン酸イオンを含む硝酸ニッケル溶液中で種々の基板に対して3MeVの水素イオン照射を行ったところ、照射部位とその周辺でニッケルが析出し試料加熱を経ることなく金属コーティングが可能であることが示された。精査の結果、金属析出は試料表面で起っているのではなく、水溶液中析出した金属微粒子が拡散により試料表面に付着していると考えられた。当該年度の結果より、本手法はポリマーのみならず金属の析出手段として利用可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液体中イオンビーム照射が、ポリマー並びに金属の析出手法として利用可能であることを実証し、新しい表面改質手法としての能力を備えていることを示したことは、当初の計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では表面改質手法としての可能性を確認した段階であり、これを応用出来る形にすることが最終年度の目標である。そのためには、使用する溶液や照射条件等を適切に選択する必要があり、実験と調査を並行して行っていく。また、改質と並んでもう一つの目的である加工に関しても、高分子材料を中心に試験を行う。
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