2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22610002
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
志村 洋子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (60134326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
汐見 稔幸 白梅学園大学, 子ども学部, 教授 (70146752)
藤井 弘義 東洋大学, 理工学部, 講師 (10058141)
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Keywords | 保育室 / 音環境 / 室内音響特性 / 環境音暴露量 / 聴力閾値 / OAE |
Research Abstract |
本研究の背景には、乳幼児期の子どもの発達に音環境が関わっていることは欧米ではその重要性が指摘され、保育の場に音環境基準として示されているにも関わらず、我が国においては、子どもにとっての重要性について、まだ十分周知されていないことが挙げられる。そこで本研究では、子どもが日々長時間過ごす保育室空間での「音」環境が、子どもと保育者にもたらす影響に視点をあて、保育室音環境に関する適正基準の根拠となりうる評価方法を開発することを目的としている。 平成23年度は22年度に続いて保育室内の音響計測を実施し、データ解析を継続した。これらのデータを基に、加工工事を行う保育室を決定し、音響特性が異なる保育室を作成するための音響特性の改変工事《吸音加工工事》を実施した。 併せて22年度に、観察園内ベランダに設置した簡易防音室を使用した聴力閾値の測定を継続し、保育室内の音響特性の差異と、保育者・成人の聴力閾値測定並びにデータ解析から得られた閾値の比較を行った。これらの聴力測定比較から、保育に携わった者の聴力損失状況が明らかになり、特に反響環境保育室内では顕著であること、一方、吸音加工済保育室内では全く聴力損失の傾向が異なることが明らかになった。特筆すべきことでは、保育終了後の1時間程度の安静や、静穏環境に在室することが一定の聴力の回復に繋がる結果も得られ、現在そのメカニズムを調査・検討していることころである。 また、幼児を対象とした聴力閾値測定をOAEを使用して実施するために、成人を中心としたOAE測定を予備的に実施して、これまで得られた成人の聴力損失との比較検討を行い、最終的な解析作業の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
保育室内の音環境に関わる評価法の開発に向けて、実験を積み重ねてきたが、実験園の事情(震災の影響など)もあり、幼児の観察が1年間途絶えることになった。このことは継続研究にとってかなりの痛手となり、解析データが充分に蓄積されたとは言い難い結果となった。 一方、保育室内の音響特性を「吸音環境」に改変したことで、保育者の意識が「音」について高いものとなり、乳児室への吸音材設置を依頼される所まで進んだ。この実践を見学に来る者も出てきており、保育室内の静穏化が子ども遊びにもたらすもの、保育者の行動にもたらすものについての研究が新しい視点から行われようとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究が目指した「評価法の開発」では、保育室内の静穏化が保育そのものの質や子ども自身に果たす意義について、一応の成果を残せたと考えているものの、評価の視点としての「音」環境について、啓蒙という点ではまだ十分とはいえず、今後の努力と工夫が必要と考えている。 これらのことについて、とりわけ一層の啓蒙をめざして著作や論文等で情報提供していきたい。
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