2011 Fiscal Year Annual Research Report
X線顕微鏡によるヒルベルト微分像の観察と位相トモグラフィーへの応用
Project/Area Number |
22611003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
渡辺 紀生 筑波大学, 数理物質系, 講師 (80241793)
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Keywords | X線 / 顕微鏡 / 位相計測 / トモグラフィー / ヒルベルト微分像 / シュリーレン像 |
Research Abstract |
X線顕微鏡において、位相コントラスト結像は吸収の少ない軽元素試料を高コントラストで観察できるため、特に生物や医療への応用が期待される。本研究では、放射光偏向電磁石や実験室系のあまり空間コヒーレンスの良くないX線源でも可能な方法として、ゾーンプレート後焦点面上でのフィルターを用いたX線位相像の取得及びトモグラフィーへの応用を行っている。 本年度は放射光Photon Factory BL3Cに構築したX線顕微鏡(5.4keV)で、まず半平面状π位相板を用いたヒルベルト微分像とAuワイヤーをシュリーレンナイフエッジとしたナイフエッジ走査フィルターによる位相微分像をアルミワイヤー等を試料としてシミュレーション結果と比較を行った。その結果、ナイフエッジ走査フィルターが非常に良い位相微分像を与えることがわかった。また、エッジスキャン範囲を変えた位相再構成結果では、シミュレーションでは光学系の分解能に対するナイキスト周波数の範囲で広くスキャンするのが良いが、実際にはそれよりかなり狭いスキャン範囲で良い位相像が得られることがわかった。それらの結果を踏まえて生物試料の位相トモグラフィーへの応用を行い、植物の胞子やアルテミア耐久卵の3次元位相像の再構成に成功した。 また、高分解能観察のために焦点距離が1/4のゾーンプレートを用いた高倍率系(約200倍)実験を行い、2次元像では線幅100mmのパターンの分解結像に成功した。位相微分像とした場合には観察できる限界が200mmと若干分解能が悪化したが、この光学系においても植物の胞子等の3次元位相トモグラフィー再構成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射光偏向電磁石光源PF BL3Cにおける開発では、当初の目標の位相トモグラフィー像の取得にほぼ成功した。しかし、実験室系の光学系の開発については回転陽極型X線源の故障等の影響で遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
Photon Factoly BL3C放射光におけるX線顕微鏡ではすでに位相トモグラフィー観察が可能な段階となっているので、生物試料等への応用をおこなう。また、同様の光学系を実験室系に構築して回転陽極型X線源を用いたX線顕微鏡での位相トモグラフィー再構成を行う。
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