2011 Fiscal Year Annual Research Report
X線CT検査による乳幼児患者の年齢別被ばく評価と防護の最適化に関する研究
Project/Area Number |
22611009
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川浦 稚代 名古屋大学, 医学部, 助教 (60324422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 啓輔 国立がん研究センター, 東病院・放射線部, 診療放射線技師 (40469937)
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Keywords | 医療被ばく / 乳幼児 / X線CT / 人体ファントム / 線量測定・評価 |
Research Abstract |
当研究課題の目的は、乳幼児の人体構造を精密に模した人体ファントムの作製を行い、その内部に微小線量計を複数設置した臓器線量計測システムを構築し、それを用いた臓器線量評価結果から、現在、医療被ばくで最も問題視されている乳幼児のCT被ばくの実態を調査・解明することである。 平成23年度は、前年度にX線CT画像から計測した小児患者の身体形状データを基に、3歳児の人体ファントム(全身)を作製する予定であったが、ファントム材料であるアクリル樹脂のマシニング加工時における加工制限や、それに伴う材料同士の接着やファントムの強度等に諸問題が生じることがわかり、各パーツの形状や加工法を見直す必要があることがわかった。この構造変更に予想外の予算を費やす結果となり、研究の本質を損なわず、予算内で臓器線量計測システムの作製を行うために、本研究課題では、3歳児の頭部ファントムのみを作製することにした。 作製した3歳児頭部ファントムの主要組織・臓器位置に、自作のSi-pinフォトダイオード線量計を設置した頭部ファントム臓器線量計測システムを作製した。この臓器線量計測システムによる計測値が、妥当な計測値を示すのかどうかを確認するために、3歳児と頭囲がほぼ同程度の6歳児ファントム(京都科学社製)を使用した臓器線量計測システム(過去の科研費研究で作製したシステム)と線量値を比較した。同じ頭部CT撮影条件で、3歳児用と6歳児用の臓器線量計測システムによる脳線量を比較したところ、両者とも同じ値を示すことが分かった。このことから、本研究で作製した3歳児頭部ファントム臓器線量計測システムは、小児の頭頸部CT検査時の被ばく評価において有意な線量情報を与えることが可能であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本人乳幼児の人体構造をX線CT画像から計測し、各年齢の日本人型乳幼児人体ファントムを作製することが目的の一つであったが、交付決定時の予算の関係もあって、3歳児型人体ファントム(頭頂部から大腿部まで)のみを作製することになった。しかし、ファントム設計段階で、ファントム材料の加工限界や、ファントムの強度の問題等が発生し、設計変更や材料費に予算が嵩み、現時点では、頭頸部ファントムの作製のみ完了している。ただし、3歳児頭部ファントム臓器線量計測システムの構築とそのシステムにおける計測値の妥当性は検証済みであるので、本研究の本質である、幼児(3歳児)の頭頸部CT検査における被ばく(臓器線量)の実態・解明は可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、作製した3歳児頭部ファントム臓器線量計測システムを用いて、様々な施設における頭頸部CT検査時の臓器線量評価を行い、3歳児の頭頸部CT検査時の被ばくの実態を調査する。また、既に所有している日本人型6歳児および欧米人型0歳児ファントムを使用した臓器線量計測システムによる頭頸部CT検査時の臓器線量との比較から、日本における乳幼児CT被ばくの全体像を把握する。文献値との比較から、日本における乳幼児頭頸部CT検査条件の妥当性と検査の最適化を検討する。3歳児体幹部ファントムの作製に関しては、既に本研究課題での予算が不足しているため、次回、科学研究費補助金の継続申請を行う予定である。
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