2011 Fiscal Year Annual Research Report
物理学的画像分析法を利用した重粒子線脳腫瘍治療モデルの解析
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22611016
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
高井 伸彦 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (70373389)
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Keywords | 重粒子線 / 認知機能 / 記憶障害 / RBE / QOL / 炭素線治療 / 脳腫瘍 / 海馬 |
Research Abstract |
重粒子線および陽子線などの粒子線治療による脳腫瘍治療の効果的利用を目的とし,実験動物を利用した脳のRBE(生物学的効果比)指標を,早期に見いだすことのできる新たな物理的画像分析法(新規 RBE 指標)を創出するための研究を実施した。 これまで脳の毛細血管密度を指標にした画像解析によって,炭素線30Gy照射による影響を1週間以内に定量解析できることを見いだしてきたが,今年度は,より少ない線量による影響を解析した結果,10Gy照射1週間後において,照射野の動脈の減少と海馬神経細胞層の小動脈の減少をはじめて見いだした。また60Gy照射では血液脳関門の破綻および血管透過性亢進によるものと考えられる要因によって,定量性が確保できない場合があることが判明した。従来,10-30Gy照射による脳への影響解析は,3ヶ月から1年以上必要とされてきたが,我々は炭素線照射後の脳内毛細血管密度の変化を,照射1週間後に測定が可能であることを見いだすことに成功した。この研究結果は,H23年度HIMAC共同利用研究成果発表会にて報告した。 以上の結果から,30Gy以下の照射線量域において,脳内毛細血管密度を画像解析することにより,新しい脳のRBE指標として利用できることが推察され,また放射線の脳への影響解析は非常に長い実験期間を要してきたが,画像解析によって実験期間を大幅に短縮できる方法として活用できることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初,脳内の毛細血管密度の画像解析によって,炭素線による脳の影響解析を見いだせない場合には,糖代謝および局所血流量,神経伝達物質の結合動態を計測することを予定していたが,新たに実施した画像解析により,照射線量30Gy以下において,定量性が確保されることが推察される至ったため,おおむね順調に計画は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
画像解析は定量性を確保するためには,非常にシビアな閾値が要求される。蛍光顕微鏡のレンズおよび解像度の向上により,より詳細な影響解析が可能となるが,レンズおよび解像度(CCD)を交換することによって,これまでのデータが使えない場合がある。そのため今年度までは,画像解析環境を改良せずに,炭素線照射後の毛細血管密度の定量性を確保することを最大限の目標とする。今後,RBE指標を算出するためには,陽子線との比較実験が必要であるが,放射線医学総合研究所との共同研究体制を整え,次なる研究課題として画像解析環境を改良した上で,脳のRBEを算出する研究を実施する予定である。
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