2012 Fiscal Year Annual Research Report
社会的排除層の自立支援に取り組む日本型社会的企業モデル構築に関する実証的研究
Project/Area Number |
22614005
|
Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
大高 研道 聖学院大学, 政治経済学部, 教授 (00364323)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 社会的企業 / 社会的排除 / ワーカーズコープ / 協同労働 / エンパワメント |
Research Abstract |
H24年度は、多様な言説が乱立する「社会的企業」がわが国において受容されてきた背景および現状をふまえて、その実践が社会的排除問題克服の真の担い手として展開するための可能性および課題について検討した。具体的には、第1に、おもに若者および障害者支援にとりくむ労働統合的社会的企業の調査を通して、当事者の協同的主体化を可能とする条件の解明を試みた。ワーカーズコープを事例とした若者自立塾の実践分析と関係者(スタッフ、当事者)との共同振り返り作業の成果は、藤井・原田・大高編著[2013]、大高[2013]、石井他[2013]など、障害者の労働支援現場における関係者(支援者・当事者双方)の労働観の変容過程については国内外の関連学会で報告した。第2に、生活困窮者支援に取り組む国内の先進的社会的企業を①移行支援型(訓練型)、②継続就労型、③混合型の3つのカテゴリーに分類して実施したヒアリング調査をもとに、就労支援に取り組む社会的企業の今日的特徴・傾向把握に努めた。なかでも、移行支援型の多くが、自らの役割を「つなぎの就労の場の提供」とは位置づけていなかった点が特徴的である。よって、多くの社会的企業が実質的に混合型に移行している。第3に、上記の移行支援型から混合型への転換は、自立支援後の就労のあり方を問い直す契機となっており、結果として、雇用に至るまでの能力形成だけでなく、「雇用そのもの」にエンパワメントの契機を見いだす視点の重要性を浮かび上がらせている。これらのテーマに関する試論的考察は、社会教育学会年報および報告書として近刊予定である。なお、その他に、社会的企業の代表的形態のひとつである協同組合の国民認知度にかかわるアンケート調査、社会的企業にかかわる諸制度の整備が進む韓国調査等にも取り組んだ。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の年度計画である若者自立支援事業の実践分析および関係者との共同振り返り作業は完了した。また、協同組合の系譜につらなる日本型社会的企業のマッピング作業も概ね終了した。第2の課題として設定していた「自立支援後の就労支援分析」は、引き続きH25年度の課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きワーカーズコープの現場を中心に、社会的包摂と当事者の協同的主体化という2つの視点を核とした日本型社会的企業モデル構築にむけた検討に取り組みたい。なかでも、困難を抱えている「当事者」のみならず、職員(支援者)や地域住民を含めた協同的・共時的エンパワメントという観点から、その実践の展開にむけた包括的枠組みを描くことをめざしたい。
|