Research Abstract |
平成22年度に実施した研究では,幼稚園児(平均年齢4.3歳)25名を対象として,子どもたちの積み木遊びを観察すると同時に,その行動や発話等の記録と保護者・担任教諭のアンケート,インタビューから積み木の製品開発に必要なデザイン設計要件の抽出を行った.さらには,障がい児等を含めた子ども達が安心・安全に使用でき,かつ心の動きや満足度などの身体的・心理的特性について分析し,あるべきユニバーサル積み木のデザインはどのようなものなのかについて検討を行った. 当該実験方法は,積み木の形状やサイズに係るデータについて考察することから直接観察法を採用して,ビデオデータをもとに園児の行動や発話を記録し,それらの定性データに解釈を加えながら検討した.具体的には「(1)箱から積み木を取り出す,(2)自由に積み木遊びを行う,(3)積み木を元の箱に片づける」の行動をヒューマン・マシン・インタフェースの5側面(身体的・頭脳的・時間的・環境的・運用的側面)からタスク分析を行い,既製の積み木の問題点とニーズの把握を行った. まず身体的側面では,60mm基尺の積み木を箱から取り出すとき滑って落としたり,隣り合った積み木に指を挟み込む光景が見られた.頭脳的・時間的側面については,箱と各積み木との制約がないため,後片付けをすることができなかった.また,箱に収納された直方体と四角柱の積み木は,平面の形が同じ長方形であることから,視覚的に識別しにくいことが示唆された.円柱については転がるため,他の積み木と構成することが難しく,その使用頻度は少なかった. つぎに,積み木の基尺と遊び方(積む,並べる,形作る)に大きな相関は見られなかったものの,60mm基尺については、叩いて音を出したり、直方体の積み木を車に見立てて遊んだりしていた. 一方,発話については,各基尺とも特に大きな差はなかったが,個人差について比較的顕著な差があり,何か作品が出来たとき,先生の注意を引くとき,積み木が崩れるときなどに見られた. 本実験研究に係わる知見から,子どもの満足度を最優先した場合,自分の作った作品を誰かに見てもらうことができ,さらにスリル感も味わえるようなデザイン開発が必要であることが分かった.
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