2010 Fiscal Year Annual Research Report
明治後期日本における工業的意匠概念と応用美術思想に関するデザイン史的研究
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22615049
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Research Institution | Akita Municipal Junior College Of Arts and Crafts |
Principal Investigator |
天貝 義教 秋田公立美術工芸短期大学, 産業デザイン学科, 教授 (30279533)
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Keywords | 応用美術 / デザイン / 工業意匠 / インダストリアル・デザイン / 工芸 / 近代デザイン / バウハウス |
Research Abstract |
本年度は、明治から平成にいたる日本におけるデザインの歴史を「応用美術からデザイン」への変化、すなわち近代的デザイン理念の応用美術思想からの脱却の過程としてとらえられていることを確認し、その過程における応用美術思想の意義と近代的デザイン理念の意義を、阿部公正氏、出原栄一氏、大西克禮氏らの主として美学的立場から論説を使って明らかにした。また、明治二十一年意匠条例から今日の意匠法にいたるまでの意匠法の主要な改正を手がかりにして、明治四十一年意匠法に見られる工業的意匠という表現がインダストリアル・デザインを意味することを明らかにした。近代的デザイン理念は、一般にはバウハウスに代表される「芸術と技術の統一」という理念と、効率(efficiency)の原理、合目的性の統一の原理、機能論理などによって特徴づけられるとともに解釈されたきた。こうした近代的デザイン理念が「多様な技術的進歩に対する美的秩序の付与」として特徴づけられる応用美術思想からの脱却として積極的に意義づけられるためには、ダゴベルト・フライの「目的への奉仕」の概念をデザインのモラルの問題として改めて考察しなければならないことを指摘するとともに、近代的デザイン理念が、デザインという形成活動を「多様な技術的進歩」と「多様な社会的変化」と「美的秩序」の統一的結合として実践的かつ倫理的に意義づけるものでなければならないことを結論した。加えて、以上のような意味での近代的デザイン理念の形成に向けての足がかりとして、明治四十一年意匠法に見られる工業的意匠という概念が考察すべき重要なデザイン史的対象となることを指摘した。
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Research Products
(1 results)