2011 Fiscal Year Annual Research Report
下肢・下顎・頭蓋骨骨細胞の部位特異的力学刺激応答に基づく骨粗鬆症治療の基礎的研究
Project/Area Number |
22616009
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
高垣 裕子 神奈川歯科大学, 歯学部, 教授 (60050689)
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Keywords | 骨粗鬆症 / 顎骨壊死 / 力学的刺激 / アポトーシス / リモデリング / 骨芽細胞 / 骨細胞 / 神経堤(neural crest) |
Research Abstract |
本研究は、部位特異的な骨の力学的刺激応答の観点から骨粗鬆症治療を再検討するもので、具体的にはマウス下肢・下顎・頭蓋骨から細胞を調整し、骨の部位特異的力学刺激応答の情報伝達経路の差異を明らかにし、それぞれの特性に対応できる骨粗鬆症治療を示唆することを3年間の目標とした。マウス下肢・下顎・頭蓋骨骨細胞の伸展刺激に対する応答の情報伝達経路の差異(Screlostin合成を介した間接的骨形成調節であった)の詳細を明らかにする実験結果よりも、直接的に骨形成を支配するメカニズム、すなわち下顎骨骨芽細胞が、低出力パルス超音波(LIPUS)刺激により、特異的なα_5β_1インテグリン依存性の分化応答並びにアポトーシスの阻止とリモデリング促進を示すことが明らかになったため、その応答の情報伝達経路マップを作成すること優先した。タンパクレベルの上昇はα_5β_1インテグリンとPI3K/Aktに依存しα_5β_1の中和抗体で消失すること、RANKL/OPG、Bcl2/Baxの比率は、それぞれ下顎骨特異的なLIPUS刺激依存性のリモデリング、サバイバルを示すこと、頭蓋骨にUPUS刺激依存性はないことを示した。結果は既に報告し、更に骨の器官培養で、神経堤細胞のマーカーであるnestinが、下肢骨と下顎骨いずれにおいてもUPUS照射により上昇傾向を示すこと、下顎骨骨膜の細胞が顕著に応答することを見出した。従って、骨芽細胞の由来する胚葉と、細菌の影響を受けやすく日常的に力学的負荷の大きい顎骨の環境とが、歯槽骨の進化の過程で顎骨特異的に骨の恒常性を保つ機能を獲得させたのではないかと考えられる。この場合、力学的刺激に曝されることが正常な機能を保つ上に必須である。日常的に力学的負荷に曝される下顎骨では、例えば抜歯窩直下の下顎骨のように力学的環境が損なわれるとリモデリングが滞り、アポトーシスが起きる、つまり顎骨壊死のような病態が起こりうるのではないかと考えられる。骨膜細胞の特異的な関与と、神経堤由来の幹細胞が骨膜細胞に分化している可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
並行して行っている研究において、歩行を制限したモデルラットで下肢皮質骨を検討すると、アレンドロネート投与歩行制限群では、皮質骨厚・ミネラルやマトリックスのRaman強度・コラーゲン架橋等の骨質は全く改善せず、却ってアレンドロネートの投与により骨強度(toughness)が最低になることが判明した(追補投稿中)。従って、力学的負荷が、荷重骨皮質骨の場合骨代謝の非常に重要な因子であることが明らかとなった。本申請のマウス下肢骨と下顎骨においても同様の解析により、組織レベルの解明可能。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の器官培養系の実験を継続し、下肢・下顎・頭蓋骨のLIPUS照射・非照射実験群において、上述の解析、すなわちpQCTとmicroCT(皮質骨厚・BMD等)、ミネラルやマトリックス、コラーゲン架橋等の共焦点顕微Raman分光法による相対的定量を用いた骨質の解析を行う。すべての測定機器は本学にて稼働中である。当初予定した骨細胞のScrelostin合成を介した間接的骨形成調節を報文にまとめる一方で(研究遂行順序の変更)、力学的負荷が荷重骨皮質骨(この場合下肢と下顎)骨代謝の非常に重要な因子である点を、細胞による調節の結果として骨質の変化に至る過程を明らかにする目的で、インテグリン中和抗体などを用いて組織レベルで検討する。動物実験・解析は、過去に我々がCOX2ノックァウトマウスの骨折治癒のモデルにLIPUS照射した報告(Ultrasound Med Biol 36:1098-1108,2010)がほぼ同等であり、それに従う。
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Research Products
(7 results)