2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22650045
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿久津 達也 京都大学, 化学研究所, 教授 (90261859)
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Keywords | 複雑生体ネットワーク / ブーリアンネットワーク / 遺伝子ネットワーク / 制御理論 / 線形離散時間システム / スケールフリーネットワーク |
Research Abstract |
本年度は以下の研究を中心に行った。 (1)代謝ネットワークのブーリアンモデルにおける影響範囲の解析 以前より代謝ネットワークのブーリアンモデルにおいて、反応の不活性化による影響範囲の数理解析を行ってきた。昨年度に影響範囲の確率分布を近似的に導く方法について検討を行い予備的な成果を得ていたが、今年度は計算機実験やデータ解析などを行い、最終的な結果を論文にまとめ発表した。 (2)周期的アトラクターの効率的検出アルゴリズム 昨年度までにブーリアンネットワークの点アトラクター(静的定常状態)の検出アルゴリズムについて研究してきたが、今年度は周期的アトラクター(周期的定常状態)の検出アルゴリズムの開発に取り組み、ANDORブーリアンネットワークおよび木幅が定数以下のブーリアンネットワークに対する(単純な方法と比較して)効率的なアルゴリズムの開発に成功した。 (3)複雑ネットワークの射影による次数分布の変換則 複雑ネットワークでは、二種類の頂点からなる二部グラフからの射影により得られるものが多く存在する。そこで、二部グラフにおける二種の頂点の次数分布が与えられた時に、それを射影して得られるネットウークの次数分布を導く規則を近似的に導出し、計算機実験やデータ解析などにより、その妥当性を確認した。 (4)複雑ネットワークの構造的可制御性 最近、複雑ネットワークで有名なBarabasiらのグループは、線形制御理論の枠組みの中で一様なネットワークは比較的少ない頂点を制御するだけでネットワーク全体を制御できるのに対し、スケールフリーネットワークなどの非一様なネットワークでは多数の頂点を制御することが必要であることを示した。しかしながら、現実のネットワークはスケールフリーな性質を持つものが多いので、比較的少数の頂点を制御するだけでそのようなネットワークを制御できるモデルの構築に取り組み始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代謝ネットワークのロバスト性解析やブーリアンネットワークの解析・制御アルゴリズムについては順調に研究が進展しているが、線形離散時間システムとブーリアンネットワークの融合についてはモデルは構築できたとしても、良い制御手法が構築できそうにないという困難に直面している。
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Strategy for Future Research Activity |
代謝ネットワークやブーリアンネットワークに関しては順調に研究が進展しているので、現在の方向性で研究を継続する。 一方、上で述べたように、線形離散時間システムとブーリアンネットワークの融合については困難に直面している。そこで、少し観点を変え、現在は複雑ネットワークの構造的可制御性という面を中心に研究を推進している。なお、融合についてもあきらめたわけではなく、今後も検討を続けていく。
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