2011 Fiscal Year Annual Research Report
中央アジアの石刻絵画の形状解析から先史時代の状況とメッセージを探る
Project/Area Number |
22650052
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Research Institution | Kobe Design University |
Principal Investigator |
高木 隆司 神戸芸術工科大学, デザイン学部, 特別教授 (80015065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 慎士 愛知工業大学, 情報科学部, 准教授 (20314099)
出原 立子 金沢工業大学, 情報学部, 准教授 (00299132)
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Keywords | 歴史情報 / 中央アジア / 石刻絵画 / 形状解析 / メッセージ解読 |
Research Abstract |
今年度は、多数刻まれているウシの絵画のスタイルについて、カザフスタンの考古学者アレクセイ・ロゴジンスキー博士と打ち合わせ、そのスタイル変化を客観的に評価する方法を開発することにした。ウシの絵画には、シルエットではなく体に多様な文様が刻まれている場合がかなりあり、それが時代とともに変化している。その変化を従来行った画像処理の手法で解析できることを、予備的な試行で確認した。 なお、考古学者の間で時代とともに絵画が単純化したことが指摘されているが、そのスタイルの詳しい分類はされていないので、旧石器時代以来のウシの岩絵について、下記のようにまず目測で分類した。 ・旧石器時代後期(ショーべ洞窟、アルタミラ洞窟など):絵画は写実的であり、彩色も多様である。 ・新石器、青銅器時代(タッシリナジェール、中央アジア、北欧、中国雲南省など):シルエット状、あるいは単純な文様を含む。体の輪郭はかなり写実的である。彩色の場合は、単色である。 ・鉄器時代(中央アジアの石刻絵画):絵画が記号化され、体も太めの均一な線で表現されている。 ・紀元後~中世(中央アジアの石刻絵画):記号化されたままで多数の線が追加され、装飾性が増した。 このような変化は、絵画制作の目的が、聖域の荘厳化から、地域社会や家族単位の繁栄へと変化したことを示唆している。これが、メッセージ解読のヒントになる。 分担者(出原立子)により、以前制作した石刻絵画に関わるアニメーションとゲーム(日本語版)の英語版を作成した。これは、絵画の保護PRのために今後活用できる。 分担者(水野慎士)によって以前開発された、木版画をコンピューター内で制作するプログラムを用いて、仮想的に石劇絵画を制作できることを確認した。これは、絵画の仮想的な修復に応用できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分担者による活動は、予定通り進行している。代表者による、ウシの絵画のスタイル変化を考慮してメッセージを読み取る方法の開発は、文化的な背景を配慮しなければならないために手間取った。しかし、9.研究実績の概要で述べたようなスタイル分類をおこなったことにより、画像解析のためのワク組みが定まったので、「おおむね順調」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
主としてウシの石刻絵画について、従来開発した形状コード(動物の絵画のスタイルを記号列で表現したもの)の方法を、胴体にほどこされた文様(格子状や斑点など)も表現できるように拡張する。それによって、いままで主観的に記述されてきたスタイルの変化を定量的に確定する。それに基づいて、ウシを含む絵画群について、それらが伝えようとしたメッセージを推定していく。
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