2011 Fiscal Year Annual Research Report
比較認知ゲノム科学の確立に向けて―比較認知科学と比較ゲノム科学のクロストーク―
Project/Area Number |
22650053
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
友永 雅己 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (70237139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 啓雄 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (60314176)
郷 康広 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (50377123)
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Keywords | 比較認知ゲノム科学 / 味覚受容体 / 嗅覚受容体 / チンパンジー / ニホンザル / 認知発達 / 双生児 / 多型解析 |
Research Abstract |
比較認知実験の対象としてチンパンジーとニホンザルを対象とした研究を推進した。遺伝的背景の網羅的検出と集団特性に注目した感覚特性の検出を目指し、前年度の味覚刺激実験を継続した。まず、チンパンジーの亜種間で味覚受容体の遺伝子に多くの違いがあることがわかっているため、これらについてゲノムレベルでの解析をさらに発展させた。その結果、東亜種と西亜種で明瞭なゲノム差が生じていることが判明し、味覚の認知的側面にも影響を与える可能性が示唆された。また、特に東亜種の個体についてフィールドで得られた試料の解析にも着手した。 また、ニホンザルについては味覚受容体TAS2R16に特異的な変異を発見し、生化学的実験と行動実験によりヤナギの樹皮に含まれるサリシンを認識するのがニホンザルではこの受容体だけを用いていることを示した。また、ニホンザルのこの苦味認知能はヒトに比べて約十倍感度が低いことがわかった。 さらに、チンパンジーにおける「におい感受性」の個体差の遺伝的バックグラウンドを解明する目的で嗅覚受容体遺伝子の多型解析を行った。嗅覚受容体遺伝子としてはヒト特異的に偽遺伝子化している可能性の高い70遺伝子を選抜して研究を行った。プライマーを遺伝子近傍領域に作製して、シーケンス解析を15個体に関して終了した。予備的な結果ながら、8遺伝子において少なくとも1個体以上において挿入・欠失型の変異を保有していた。このタイプの変異を持つアリルは偽遺伝子化していることが予想されるので、それらの嗅覚受容体遺伝子に関しては「においの感受性」の個体差を生み出しうる事を明らかにした。 また、高知県のいち動物公園で順調に成長している二卵性の双子チンパンジー乳児についての行動観察を縦断的に実施した。乳母代わりの個体の存在が両方の子どもの生存に大きく寄与していることなどが明らかとなった。二卵性でかつ雌雄であるためふたりの間の個性が顕著にありつつある。将来的にはこれらの個体を含む親子についてもゲノム解析を進めるべく検討を続けている。
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