2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能解明に向けたソングバードの分子遺伝学的技術の改良
Project/Area Number |
22650064
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邉 大 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (90303817)
|
Keywords | トランスジェニック動物 / ソングバード |
Research Abstract |
ヒトの言語発達と良く似たプロセスにより音声コミュニケーションの能力を後天的に獲得する鳥類(songbird:鳴禽)は、脳研究の新たなモデル動物として注目されている。研究代表者は、songbirdの発生工学的手法の開発に独自に取り組み、トランスジェニック個体の作出・育成に成功した。しかしながら、遺伝子組換えsongbirdを神経科学領域の研究に適用するには、さらに技術的制約を克服する必要がある。脳は極めて多様な神経細胞から構成される。したがって、その機能を明らかにするためには、特定の神経回路選択的に遺伝子の発現制御を正確に行うことが重要である。本研究では、遺伝子発現の時間的・空間的制御の精度を改善すべく、songbirdの遺伝子導入技術にさらに改良を加えることを目的とする。本研究で発展させるsongbirdの遺伝子組換え技術により、コミュニケーションや社会性に関する発達障害の病態を分子から個体レベルで検証するための精度の高い実験モデルが構築できる。これらの疾患の治療・療育法の開発が効率よく推進可能となり、医学のみならず社会への多大な貢献が期待できる。本年度は、遺伝子導入効率の改善を目的として、新規アデノ随伴ウイルスベクターの効果を検討した。Rous sarcoma virus由来のユビキタスなプロモーター下にマーカー遺伝子を発現するコンストラクトを作成し、ソングバードの胚細胞への遺伝子導入およびニワトリおよびゼブラフィンチの中枢神経系培養細胞を使って、レンチウイルスとの遺伝子発現効率の比較を行った。その結果、ソングバードの胚細胞への明確な遺伝子導入効果は観察されなかったが、同じウイルス粒子数あたりの感染効率について、ニワトリおよびゼブラフィンチのいずれの細胞に対しても、新規アデノ随伴ウイルスベクターが高効率に感染することが明らかとなった。以上の結果は、新規アデノ随伴ウイルスベクターとトランスジェニック技術を組み合わせることで、ソングバードでの経路選択的な遺伝子操作が期待できる。
|
Research Products
(10 results)