2010 Fiscal Year Annual Research Report
社会的・環境的慢性ストレスによる神経・内分泌・免疫系破綻のメカニズムの解明
Project/Area Number |
22650072
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
木山 博資 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (00192021)
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Keywords | 下垂体 / 疲労 / ストレス / 細胞死 / PAP / Id |
Research Abstract |
ラットを用いた慢性ストレスモデルでは、内分系の中枢臓器である下垂体に細胞死が見られることが明らかになったが、中枢神経系にはそのような細胞死は見つかっていない。しかし、下垂体は視床下部から強い制御を受けており、視床下部の神経細胞が過労に応答していると予想される。そこで、どのような神経細胞に変化が生じているのかを各種マーカーや神経活性物質の発現を指標に検討した。その結果、視床下部の一部のホルモン分泌の低下やc-Fosなどの転写因子の発現に違いが観察された。これらの発現変化がどのような刺激により生じるのか、あるいはどのような神経回路のなかに位置づけられるのかは次年度の課題である。本年度は慢性疲労動物モデルで末梢臓器の変化も解析した。特に下垂体に多くの新たな変化を見いだすことができた。下垂体中間葉では疲労時に転写活性調節因子であるDNA binding(Id)ファミリーのId1~3が発現し、これらの発現は視床下部でのドーパミン産生抑制によることが明らかになった。また、同じく中間葉には再生や炎症時に発現が見られるPAP-IとPAP-IIの発現が観察され、中間葉では細胞新生による組織再生が亢進していることが示唆された。実際BrdUを用いた実験により、中間葉では細胞新生が亢進していることが明らかになった。その他、前葉の成長ホルモン産生細胞にも変化が生じていることが明らかになった。また、現在使用中の実験動物モデルの妥当性を証明するために、動物モデルで得られた疲労マーカーのαMSHの濃度を慢性疲労の患者で計測した。その結果、罹病5年以内の慢性疲労の患者ではαMSHが有意に上昇していることを同定した。このことは、我々が用いている慢性疲労モデル動物の有用性を示唆するものである。
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