2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会的・環境的慢性ストレスによる神経・内分泌・免疫系破綻のメカニズムの解明
Project/Area Number |
22650072
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木山 博資 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (00192021)
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Keywords | ストレス / 下垂体 / 慢性疲労 / 視床下部 / 内分泌 |
Research Abstract |
本研究は、科学的な立証が難しく、しかしその解明が社会的にきわめて強く望まれている疲労や慢性ストレスの分野に、生物学的基礎医学的見地から挑戦するものである。再現性の良い複合慢性ストレスモデルとして確立されたラットモデルを用い、慢性的ストレス下での神経・内分泌・免疫系からなる恒常性維持のシステムが、どのように破綻してゆくかを分子レベルや細胞レベルから検討することをめざした。本年度は、慢性ストレス下での下垂体前葉系の細胞の変化を解析した。その結果somatotrophの形態に異常が見られた。Somatotrophでは細胞体の萎縮と成長ホルモンの分泌抑制、さらに増殖の停止が観察された。しかし、somatotroph自体の細胞死は見られなかった。また、これらの変化は中枢視床下部のGHRHホルモンレベルの低下によること、さらにGHRH刺激によりERKのリン酸化や核内移行が生じないことも明らかになった(投稿中)。また、下垂体の下流に位置する末梢の内分泌臓器のうち副腎皮質がやや肥大傾向が見られただ、有意差は得られなかった。免疫系臓器の胸腺では明らかな萎縮が、脾臓でも萎縮傾向が見られた。免疫系では炎症応答性が慢性ストレスによりどのように変化するかについてもLPS刺激を用いて検討した。その結果、免疫応答のTNFαなどの発現増加慢性ストレスラットでは見られないことが明らかになった。以上の結果から、本モデル動物では内分泌系と免疫系の器質的異常と機能的異常が生じていることが確認された。今後、慢性ストレスや疲労を研究してゆく上で有効なツールであると考えられる。
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