2010 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症スペクトル新規感受性遺伝子Gasc1を標的とした疾患モデルマウスの解析
Project/Area Number |
22650077
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
鹿川 哲史 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50270484)
|
Keywords | エピジェネティクス / ヒストンメチル化修飾 / 発達障害 / 自閉症スペクトル / Gasc1 / 食道扁平上皮癌 / 行動テストバッテリー |
Research Abstract |
自閉症スペクトラム(autism spectrum disorders)は遺伝性の高い神経発達障害であるが、疾患特異的な責任遺伝子は殆ど見つかっていない。2007年、SNPアレイ解析によりヒト第9染色体(9p24.1)のSNPに連鎖が報告され、近傍に責任遺伝子の存在が示唆された。本研究では、ヒト9p24.1にマップされるヒストン脱メチル化酵素をコードするGasc1遺伝子と自閉症スペクトラム関連を明らかにした。まず、Gasc1の異常により脳の発達障害が生じるか調べるために、遺伝子トラップ法で得られたヒストン脱メチル化酵素Gasc1遺伝子低発現マウスの行動テストバッテリーを行った。生後2ヶ月齢のGasc1遺伝子低発現雄マウス20匹と正常雄マウス20匹を用い、筋力、不安様行動、運動学習、各種記憶機能測定、ホームケージ活動記録、社会的行動測定テスト、暗暗条件移行後の概日リズム等を比較測定した。その結果、Gasc1遺伝子低発現マウスには顕著な多動・固執傾向、反復的常同行動、および作業記憶・参照記憶異常などが検出された。これらの行動異常は自閉症スペクトラムの中核症状に類似しており、エピジェネティク修飾異常と自閉症スペクトラムの連関が予想された。遺伝子トラップベクターに組み込まれたβ-geo遺伝子を指標としたGasc1発現様式の組織学的解析を行った。Gasc1は主にニューロンに発現しており、特に大脳皮質の第2層から第6層、海馬アンモン角や歯状回で強かった。Gasc1遺伝子低発現マウスの大脳や脳幹のジメチル化ヒストンH3K9が減少していた。これにより、Gasc1のトリメチル化ヒストンH3K9を基質とした脱メチル化活性が初めて生体で証明された。
|
Research Products
(8 results)