2010 Fiscal Year Annual Research Report
病原性ミトコンドリアゲノムの臓器特異的維持・排除機構の解析
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22650091
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中田 和人 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 准教授 (80323244)
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Keywords | ミトコンドリア / ミトコンドリアDNA / 体細胞突然変異 / エネルギー欠乏 / モデルマウス |
Research Abstract |
病原性突然変異型mtDNAの蓄積が様々な病気(ミトコンドリア病、神経変性疾患、がん、糖尿病、さらには老化)などに関与している可能性が示唆され大きな注目を集めている。しかし、このようなミトコンドリア関連疾患の病態発症研究では変異型mtDNAの病原性探索に終始し、それらの病型を特徴づける「臓器間における変異型mtDNAの蓄積の差異」については、その分子機構はおろか、存在すら証明されていない。本研究では、野生型ミトコンドリアゲノム(mtDNA)と病原性欠失型mtDNAを混在させたマウスにおいて、欠失型mtDNAの蓄積が臓器間で異なるという現象の発見を発端に、この「臓器間における欠失型mtDNAの蓄積の差異」を生み出す生体機構を解明し、多様なミトコンドリア関連疾患の病態発症研究に新たな視点の創成を目指している。今年度は、mtDNA動態とそれを変化させる要因に関して研究を行った。まず、胚期-出生-成長という時間軸における欠失型mtDNA動態をリアルタイムPCR法にて定量化し、臓器間マップを作成した。その結果、胚期では臓器間で欠失型mtDNAの含有に大きな差異はみられないものの、出生後早期に欠失型mtDNAの蓄積傾向が変化することが分かった。特に肝臓における蓄積は他の臓器のそれより極めて緩慢であり、逆に腎臓や心臓では明らかに欠失型mtDNAの蓄積が顕著であった。このような特的臓器における欠失型mtDNAの蓄積傾向は病態発症と相関しているため、このような蓄積を制御する生体機構の解明とその抑制は一定の治療効果につながると期待できる。さらに、欠失型mtDAの蓄積によるミトコンドリア呼吸機能不全状態にて必発する乳酸の過産生にミトコンドリアバイオジェネシスをさらに低下させる二次的な病原性があることを見出した。また、乳酸産生の抑制はmtDNAの複製・転写を増強することから、過産生された乳酸が欠失型mtDNAの動態変化にも関与することが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)