2011 Fiscal Year Annual Research Report
時空間的分化パターン誘導による幹細胞群からの臓器機能構築システム
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22650102
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
齋藤 敬 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (70418771)
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Keywords | 人工臓器学 / 再生医工学 / 細胞治療 / 光化学 / 細胞 / 自己組織化材料 / 酸化 / 自動化 |
Research Abstract |
細胞分化の制御は再生医療の大きな課題であるが、現在は単純な組織に限られ、臓器については再生の目処が立っていない。我々は細胞死を誘発しにくいサブミクロン径の細胞膜穿孔法を発見、本研究では膜穿孔法と自己組織化材料との組み合わせによって、大規模細胞分化誘導システムの開発を行う。 また、細胞への物質導入は光照射によって誘発されるため、光照射パターンの制御により、細胞集団に任意の時空間的パターンで分化誘導を行いうる。これにより、臓器のような多種の細胞からなるシステムを人工的に構築する技術の目処をつける。全体計画としては、光酸化反応を誘発できるナノ剣山状細胞膜穿孔体とその運用システムによって、シート状の細胞群の個々の細胞に対し、印刷的に任意のパターンで物質を導入する、大規模集積型の細胞分化誘導システムを開発する。 平成23年度には培養・分化が容易なラット由来クロム親和性褐色細胞種PC12細胞を対象とした。細胞実験と装置構築を同時並行で進める予定を変更し、細胞実験の定量性を優先的に確保すべく装置に必要な技術要素を開発した。その結果、分化誘導システムの中核機構である加圧装置精度の向上、分化誘導因子を含む複数の液を交換可能な送液機構の開発、ハロゲンランプ光源とデジタルマイクロミラーデバイスによる光照射パターニング機構といった装置の構築、そして様々な細胞膜穿孔体形状や細胞密度に対応した、運用ソフトウェア開発に成功した。 以上のハード・ソフト合わせたシステム構築により、本研究の最終課題である前例のない高度な細胞分化誘導実験に向けた機材の準備は、ほぼ1年前倒しで整った。このため平成24年度には細胞分化誘導実験に集中して取り組むことが可能になった他、このシステムを応用した共同研究も具体化しつつあり、一層の波及効果が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞対象の実験はやや遅れているが、装置開発の面では計画以上に進展しており、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は東京大学バイオ系での研究計画であったが、代表者移籍のため秋田県立大学機械系で研究を行っており、この間で最も変化したバイオ系の研究環境の埋め合わせに難儀してきた。しかしながら秋田県立大バイオテクノロジーセンターや秋田大学医学部との連携が軌道に乗りつつあり、最終年度となる平成24年度には十分な成果が期待できる。加えて両研究機関との発展的な研究課題についても具体的な内容がいくつか定まり、一部は学内予算の支援を受け既に実施中である。更に細胞改変システム実用化に向けた産業界の支援についても、産学官で具体化を進めている。
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