2011 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷モデルマウスにおける実験的異所性骨化の成因と病態の研究
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22650126
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河村 守雄 名古屋大学, 医学部, 教授 (30186150)
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Keywords | 異所性骨化 / 骨形成因子 / 脊椎損傷 / 動物モデル / 運動負荷 |
Research Abstract |
1)生物活性のある粗製骨形成因子(crude bone morphogenetic protein、以下BMP)は予定通りの必要量が確保できた。 2)次いで、ddYマウス(雄性、6週齢)の第8胸椎を椎弓切除し、出現した脊髄に対しweight drop方式により完全脊髄損傷群と不全脊髄損傷群ならびにSham手術群を作成した。手術後1週間にわたり後肢麻痺の回復状態を改訂版BBB scaleにて評価し、麻痺の状態が安定したところで、次の操作に入った。 3)BMPの移植:粗製BMPを3mgずつゼラチン・カプセルに詰め、ddYマウスの大腿ハムストリングスの筋膜下に移植した。 4)膝関節他動運動の負荷:BMPを移植した麻痺肢の膝関節に対し、continuous passive movement(CPM)負荷装置にて、毎日1回×15分×3週間、1サイクル/秒の速度で強制他動屈伸運動を負荷した。対照群として、運動非負荷群を作成した。 5)新生骨形成量の比較検討:移植後21日目で両後肢softex X-P撮影により新生骨形成状態を破認し、新生骨部をサンプリングした。次いで1000℃にてサンプルを1時間焼灼し、灰分重量を測定し各群の新生骨形成量を比較した(対応あるt検定)。 6)結果として、強制運動負荷群が非負荷群に対し、有意に旺盛な新生骨形成を示した(p<0,05)。このことは、臨床において脊髄損傷患者に異所性骨化が多く見られ、とくに関節強制運動が誘因になっている事実と酷似している。 7)次いで、組織学検討を行った。BMP移植後、3、5、7,14日目の試食部周辺組織をサンプリングし、ヘマトキシリン-エオジン染色、アルシアン-ブルー染色、Myoblast determination protein染色(MyoD1)、フォン・コッサ染色、アリサリンレッドS染色を施行し観察した。移植3日目からBMP周辺に旺盛な炎症性細胞の浸潤、5日目では軟骨基質の形成、MyoD1陽性の筋芽細胞核、7日目では広範囲に軟骨組織が形成されたのが確認できた。14日目では軟骨性骨化の像が認められた。 以上のように、定量的にも組織学的にも脊髄損傷と運動負荷が異所席骨化に関与していることが判明し、臨床における異所性骨化の病態究明、治療、予防に手がかりとなることが期待される
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊髄損傷モデルマウスにおいて、運動負荷が異所席骨化の促進因子になることが確認でき、またBMP移植早期における炎症細胞浸潤、中期における軟骨基質形成さらに内軟骨骨化が病理組織像として確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
BMP移植早期に旺盛な炎症性細胞の浸潤があり、その後の異所性骨化に強く関与していることが示唆されるため、これらの細胞と細胞が産生すると考えられる各種サイトカイン(TFF-α、IL-1、IL-6など)の発現や作用について、通常の染色に加え、免疫染色を施行し、病理組織学的検討をさらに深める予定である。
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