Research Abstract |
スポーツにおいて高いパフォーマンスを発揮できる心身の状態は,競技の特性や選手の個性による差が大きく,各自に適した調整方法も異なっている。このような個人差の大きな現象には,一般法則の検証を目的とする通常の科学的研究方法を適用するだけでは有効な成果が得られないため,実践活動の成果(アウトカム)の向上に寄与する新たな実践的研究の方法論を提示することが,本研究の目的である。 本年はまず,実践に適した応用的研究の方法論を理論的に検討して発表した。これは,アウトカムの予測が可能な包括的媒介変数を設定し,その変数を基準として個別に調整目標を定め,介入方法(独立変数)を一定に統制せずに個性や目標に応じて選択し,個人差や課題差を重視して全体的なアウトカムの向上を目指すものである。この実践的研究法を適用することで,単一の介入技法ではなく介入システム全体の有効性を検証することができる。 次に,この方法論を用いた研究のモデルを具体的に提示するため,複数の種目のスポーツ選手を対象に,特定のプレイのパフォーマンス(アウトカム)の高低と関連する心理状態(包括的媒介変数)を個人ごとに設定し,目的に応じた多様な身体技法(軽運動,自律訓練法,ルーティン)を活用して,心理状態を各自の最適エリアに調整するシステムに関する研究を実施した。結果として,バスケットボールのフリースロー,バトミントンのサービス,野球のバントなどのプレイに関して,高いパフォーマンスと関連する心理状態の特徴がプレイの種類別,個人別に異なっており,適した身体技法を選択的に実施することで,各自の目的に適した方向に心理状態を調整することができ,パフォーマンスの改善に役立つことが確認された。
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