2010 Fiscal Year Annual Research Report
体験の質から見た大学一般体育受講学生の負の遺産と教員の心理的疲弊に関する研究
Project/Area Number |
22650143
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石川 国広 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 助教 (10212838)
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Keywords | 体験の質 / 一般体育受講学生 / 負の遺産 / 教員の心理的疲弊 |
Research Abstract |
大学一般体育受講学生が、小学校から高校までに受けてきた体育授業での体験の概要を把握して、その「体験の質」について検討する目的で、予備的な調査を実施した。調査内容は、これまでの体育授業について、印象として好意的に受け取っているのか否か、およびその理由、他の教科を含めた学校生活の中での体育の位置づけや意味付け、自分自身の取り組みの程度、教員の教え方や関与の仕方などに関するものであった。 その結果、約2~3割程度の学生が小学校から高校までの体育の授業に対してネガティブな印象を持っており、特に中学校での印象があまり良くない傾向にあった。印象が良くない全般的な理由としては、教員の厳しさ、画一的で命令的な指導、上手な人が中心になりがち、他人との比較、放任的で適当な授業などのキーワードがあげられていた。この時期は、体力的な要素以外にも自尊感情を高めたり、コミュニケーション能力を向上させるような働きかけが重要なはずだが、むしろ体育の授業がマイナスに作用している可能性もあることが推察された。 一方で、ポジティブな印象を持つ者の理由としては、遊び感覚、試合ばかりだった、勉強の中の息抜き、自由放任で楽しかった等の記述があり、不的確な指導や不十分な内容の授業が存在する様子がうかがわれ、こういった体験の積み重ねが、大学での体育の授業軽視につながる可能性も考えられ、負の遺産として捉え直すことが必要だろう。 教員に対しては、インタビュー形式で現状把握を中心に行った。その結果、各大学ごとに体育の授業の位置づけや形態にかなり幅があることがわかった。今後、教員の心理的疲弊について研究を進めて行くにあたっては、必修単位としての授業を担当していることや、授業の運営形態、1クラスあたりの学生の数や施設との関係など、ある程度の条件を考慮して対象を選定した上で、調査を実施して行く必要があるものと考えられる。
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