2011 Fiscal Year Annual Research Report
体験の質から見た大学一般体育受講学生の負の遺産と教員の心理的疲弊に関する研究
Project/Area Number |
22650143
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石川 国広 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 助教 (10212838)
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Keywords | 体験の質 / 一般体育受講学生 / 負の遺産 / 教員の心理的疲弊 |
Research Abstract |
大学一般体育受講学生が、小学校から高校までに受けてきた体育授業での体験の概要を把握し、「負の遺産」とも呼ぶべきネガティブ体験について検討する目的で調査を実施した。調査内容は、これまでの体育授業を印象として好意的に受け取っているか否かとその理由、他教科を含めた学校生活の中での体育授業の位置づけ・意味付け、教員の教え方等に関するものであった。 小学校から高校までの体育授業に対して、ネガティブな印象を持っている学生は約2-3割程度いたが、「運動が得意でない」「苦手」「先生が嫌い」等の背景が潜んでいることが窺われた。それらの学生に特徴的なのは、教員の教え方が「指示命令・威圧的」と捉えている割合が約4-6割と非常に高く、ポジティブな印象を持っている者の約2-3倍と高い値を示し、やらされている感じ、画一的、規則・規律重視などの理由が記されていた。 次に割合の高い教え方は、「自由・放任的」で特に高校でその傾向が強く、指導がなかったり、いい加減、放任過ぎて無意味、暇つぶし等の受け取り方をしている者さえいた。この傾向は、ポジティブな印象を持っている者にも多く、高校では約5割以上が「自由・放任的」と捉えており、受験の息抜き、気分転換、遊び等の記述が目立った。 一方で教え方が「主体性尊重・支援的」と捉えている者は、より好意的な受け止め方をしており、丁寧な指導、頑張りの評価、内容の面白さ、生徒が計画、ストレス発散などが理由として上がっていた。 教員の疲弊については、話を聞いて理解し主体的に動くことや、周囲と関わって関係性を作り、授業運営に協力的なこと等、大学生として当然期待したいことが出来るか否かが影響していることが窺われ、学生側の過去の体験を踏まえた理解と同時に、授業での指導スタイルや内容を再考し、学生の潜在的な力を引き出すような授業展開について、教員が柔軟に対応する必要があるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた程度の進捗状況の範囲内にあり、期待していた成果が得られつつあると考えられるから。
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Strategy for Future Research Activity |
大学一般体育受講学生が、小学校から高校までこれまで体験してきた体育の授業でのネガティブ体験、いわゆる「負の遺産」に関する内容に関して継続して掘り下げる一方で、適宜インタビューなども交えて、その実態に迫っていく。 また、教員側の疲弊に関しては、調査協力者を増やし、教員の目指している授業運営や達成目標について具体化していって、その上で何がストレス体験・ネガティブ体験となっているのか等について、より明らかにしていきたい。 これまで明らかになってきた学生の「負の遺産」としての背景要因を踏まえた上で、学生と教員の相互の理解を深めた授業展開を試みて、互いに充実度や満足度のより高い授業に結果としてなったのかどうかについて検討を加え、より良い授業実践をしていくための方策について考えたい。
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