2010 Fiscal Year Annual Research Report
軍事・社会・政治への革命的影響に関する人造硝石の史的研究
Project/Area Number |
22650213
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
加藤 朗 桜美林大学, 法学・政治学系, 教授 (10286239)
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Keywords | キーア / 硝石 / 堆肥 / 硝石丘法 / コウモリ / 糞 / 硝酸リカウム |
Research Abstract |
平成22年度の調査研究はまず国内では金沢および種子島で実施した。金沢では金沢市郊外の加賀藩の火薬製造所の跡地を調査した。ここには越中五箇山から牛を使って塩硝(硝石)が運搬されてきた。五箇山での硝石づくりは堆肥の作り方と同じで、カイコの死骸や糞、草木の切り屑などを使う。この堆肥法がどこから伝わったかは不明である。他方種子島では牧場近くに田んぼのようなところに牛馬の糞を集めて堆肥をつくるように硝石を製造する硝石丘法(牧畜法)で行われていた。硝石丘法はヨーロッパと同じである。鉄砲伝来の際に同時に製造法が伝わったものと思われる。 国外では中国、タイ、ラオスの三か国を調査した。まず中国では雲南省西双版納州景洪市嗄棟郷曼回索村のタイ族の古老に硝石の製造法を訊いた。30年前までは高床式の土間で飼育していた豚や家禽の糞まじりの土を利用して硝石を作っていたという。製法はタイから来た先祖から受けついで来たという。 次にタイ、ラオスではコウモリの糞から硝石を製造する方法を調査した。タイ、ラオスの平野部には多数のコウモリが洞窟の中に群生しており、洞窟に堆積した糞を使って硝石が作られていた。ウボンラチャタニ県ヤソートン市で数人の古老にインタビューした。重要な発見は現地では硝石のことをキーア(コウモリの糞)と呼んでいた。つまりコウモリの糞と硝石とは同義語だったのである。それほどコウモリの糞が硝石の原料として用いられていた。さらにラオスのVIENTIAN県NONHEENHAIR村で古老に実際に硝石づくりの手順を再現してもらい、世界で初めて蝙蝠の糞から硝石を作る方法を映像で記録した。この時入手した蝙蝠の糞からごく微量の硝酸カリウムの抽出に成功した。 五箇山、種子島、中国、タイ、ラオスのいずれにおいても硝石は堆肥の製法で作られており、硝石は農業と密接な関係にあることが実証できた。
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