2012 Fiscal Year Annual Research Report
軍事・社会・政治への革命的影響に関する人造硝石の史的研究
Project/Area Number |
22650213
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
加藤 朗 桜美林大学, 法学・政治学系, 教授 (10286239)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 人造硝石 / 黒色火薬 / 軍事革命 |
Research Abstract |
三年にわたる種子島、金沢、イギリス、中国、タイ、ラオス、チリ等国内外の現地調査で、人造硝石であれ天然硝石であれ、硝石には硝酸ナトリウムや硝酸カルシウムなど強酸化作用はあるが潮解性が高く火薬としては不向きな他の硝酸塩が多量に含まれていることがわかった。通説とは異なり、硝石が産出するからと言って、それが直ちに黒色火薬に使用できるわけではない。灰汁煮によって潮解性の低い純粋な硝酸カリウムを抽出しなければ銃砲に使う実用性のある黒色火薬はできない。黒色火薬を作るには、天然硝石の採掘や堆肥法による人造硝石の製造によって硝酸塩を採取するのと同じほど、灰汁煮に必要なカリウムの生産が重要だったのである。つまり木灰がなければ、木がなければ、森林がなければ、戦争に必要な大量の黒色火薬は製造できない。本研究の最大の成果は、黒色火薬の製造には硝酸だけでなくカリウムすなわち木灰が必須であることが明らかになったことである。19世紀以前カリウムはほぼすべて木灰によって調達されていた。 木灰の調達という視点に立てば、なぜヨーロッパと日本で銃砲が普及したかが説明できる。ヨーロッパや日本のような湿潤な気候の牧畜・農業地域では家畜の糞尿や動植物の死骸で硝酸塩を含んだ土はどこにでもある。この土から硝酸塩を抽出し、近隣に生い茂る森林から切り出した木で灰を作って硝酸カリウムを容易に作り出せる。他方中国、インド、チリ等では砂漠や乾燥地に鉱石として硝酸塩が大量にとれる。しかし、灰汁煮に使う多量の木が近隣にはないために硝酸塩を灰汁煮できず、硝酸カリウムも実用的な黒色火薬も生産できず、銃砲の発展が遅れたのではないか。中国でも火薬の技術が発展したのは、硝酸塩が取れる乾燥地域ではなく雲南省のような温帯樹林帯の地域である。 今後の研究の眼目は、森林と火薬の関係にある。19世紀半ばまで森林の規模が帝国の運命を左右したのである。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(1 results)