2010 Fiscal Year Annual Research Report
主導的な文化遺産国際協力における耐震工学の役割に関する国際動向
Project/Area Number |
22650215
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
花里 利一 三重大学, 大学院・工学研究科, 教授 (60134285)
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Keywords | 文化遺産 / 国際協力 / 耐震工学 / 地震 / 災害 / 保存修復 |
Research Abstract |
本研究は、わが国の文化遺産国際協力において、文化遺産の防災対策に関する国際的な活動と戦略に関する現状について、近年の災害地震を対象とした調査を行い、その課題を国際比較により抽出し、今後、わが国の防災工学とくに耐震工学に関する役割を明確にすることを目的とする。さらに、この分野において、国際的に主導的な役割を果たせるように国際的なネットワークを構築することを目的としたものである。 初年度の平成22年度には、国際機関ユネスコ・イコモス(国際記念物遺跡会議)の動向調査および近年の大地震で被災した文化遺産の修復と復興に関するフォロー調査を実施した。 イコモスの動向調査では、歴史的建築物の構造に関する国際的な活動を行っているISCARSAH(歴史的建築物の構造修復と解析に関する国際学術委員会)(エジンバラ(6月)および上海(10月)で開催)に日本イコモスを代表して出席し、各国の文化遺産災害対策についての動向を調査するとともに、大型振動台を用いた組造建築の耐震実験およびわが国の文化財木造建築の耐震・耐風性能に関する講演を行った。とくに、木造建築の防災対策に関してはわが国が国際的に主導的な役割を果たすことが期待されている分野であり、国際委員会におけるプレゼンテーションは有意義であり、ネットワークを構築することができた。地震災害調査では、歴史的建築物に被害を与えた地震として、1999年ギリシャ・アテネ近郊地震、2006年インドネシア・ジャワ島中部地震、2009年イタリア・ラクイラ地震を対象として、文化遺産の復興状況に関する調査を実施した。さらに、イラン人研究協力者の協力を得て、2003年イラン・バム地震で被災した世界遺産中世歴史都市アルゲバムの修復状況について情報を得た。これらの地震で被災した歴史的建築物のほとんどは現在も修復が続けられている。とくに、インドネシア、イランでは国際的な協力体制も期待されており、わが国が主導的な役割を果たすことが可能な状況にあるとがわかった。また、イタリアは耐震工学の先進国のひとつであるが、被災した歴史的組積造建物の修復技術に関する現状を把握し、今後のネットワークの構築に関する合意を得た。
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Research Products
(4 results)