2011 Fiscal Year Annual Research Report
刑余者支援とホームレス支援の協働を促進する新しい居住福祉地理学の提案
Project/Area Number |
22650220
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
水内 俊雄 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 教授 (60181880)
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Keywords | 矯正施設 / ホームレス / 中間施設 / 社会的排除 / 福祉の地理学 / 刑余者 / 地域生活移行 / 居住福祉 |
Research Abstract |
本研究は、矯正施設退所者、いわゆる刑余者が出所後に如何に地域へと移行し、生活をどのように行うか、さらに再犯にいたらないような支援は可能かどうか、そのための居住福祉支援の実効性を問う実践的な調査研究である。支援の主体として、研究代表者もかかわる刑余者のアフターケアを行う、日本で最も活動的な民間組織である、よりそいネットおおさかの活動が、本研究の主たるベースである。このよりそいネットの活動のフォローアップとその実効性の検証が、実践的にも強く求められている。また、この団体のネットワークを利用しながら、全国のさまざまな刑余者支援の実践を当面明らかにしてゆくというパイオニア的研究調査ともなっている。 一昨年に法務省と厚生労働者が連携を取り、刑余者のアフターケアを主眼とする地域生活定着支援センターが各都道府県に設けられるようになったが、大阪府は当該よりそいネットが受託しているので、この活動のモニタリングも併せて行っている。 本年度はこの取り組みに対して、いくつかの報告を行ったが、見えてきた特徴として、地域居住資源と地域福祉資源の連携の有効性や、医療・福祉・司法の制度間の橋渡し的な存在の必要性などがあげられる。 一方、この定着センターの受託団体や、深い関係のあるホームレス支援団体にも、刑余者の事例についての聞き取りを行った。出所後に生活困窮し野宿へ至るなどして支援につながる事例が多い。その経験値がある都市部では、ホームレス支援と刑余者支援の連携が居宅の確保をするうえで重要なパイプとなっていることが分かった。一方、ホームレス支援団体のない地方などでは、都市部へ移行させる事例も目立ち、出所後の受け止め方の検討も喫緊の課題と言えよう。このように刑余者支援は、各領域(福祉、司法、医療、ホームレス等)の連携支援プロセスの上に成り立ち、都市・地方間をダイナミックに行き来するものであることが見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、地域居住資源の抽出としては、一般住宅を改修したグループホームや、自立準備ホームなどへの活用、生活保護受給者向け支援付き住宅などが見えてきた。そこに、よりそいネットおおさかのような専門機関のアセスメント・アフタケアーに介入し、居住福祉支援として全体を捉えることで、当事者のタイプに合わせた居住環境の選択がなされている傾向がつかめる。また、医療・福祉・司法の連携では、各地での研修会や講演会などを通じて、研究レベル、実践レベルなどで模索されつつあり、よりそいネットのようなネットワーク団体があることでのスムーズな橋渡しはひとつのモデルと言えることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた全国の地域生活定着支援センターで、ユニークな取り組みをしている数ヶ所のセンターへの聞き取りおよびデータ提供に関しては、個人情報の扱いについての規定が全国的に未整備であり、統一見解が得られるまで調査続行が不可能となった。調整を踏まえて来年度調査の課題としたい。
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