2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22650233
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮川 清 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40200133)
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Keywords | がん精巣抗原 / 感受性予測 / 化学療法 / 放射線治療 / 個別化治療 |
Research Abstract |
減数分裂特異的な構造物であるシナプトネマ複合体を構成するSYCP3は、多様な種類のがんで発現するがん精巣抗原である。この遺伝子の体細胞における役割を理解するために、ヒト正常上皮細胞に外来性に発現させたところ、核内に局在するとともにDNA損傷のマーカーであるγH2AXの核内フォーカス形成が増加し、DNA修復機能の低下が示唆された。そこで、放射線とシスプラチンに対する感受性を解析したところ、SYCP3の発現により、これらに対する感受性が亢進することが明らかとなった。この感受性のパターンはDNA二重鎖切断に対する相同組換え修復の機能低下の可能性を示唆するために、その修復の中心的分子であるRad51の機能を放射線照射後の核内フォーカス形成で検討したところ、SYCP3発現細胞で低下が見られた。この結果は、SYCP3の発現によって相同組換え修復が阻害されることを示唆するために、次に、PARP阻害剤によって相同組換え機能低下との合成致死アプローチによる感受性の変化を解析した。SYCP3発現細胞はPARP阻害剤に対して感受性が著しく亢進し、確かに発現細胞では相同組換え修復機能が低下していることが裏付けられた。このような結果を確認するために、SYCP3発現がん細胞株において、RNA干渉によってSYCP3の発現を低下させたところ、Rad51のフォーカスは増加し、PARP阻害剤に対しては抵抗性となった。非発現がん細胞にメチル化阻害剤を添加すると、SYCP3の発現が誘導された。以上の結果より、体細胞では低メチル化で発現が誘導されるがん精巣抗原SYCP3は、相同組換え修復機能を抑制することによって、放射線や化学療法に対する感受性を亢進させていることが明らかとなった。
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