2011 Fiscal Year Annual Research Report
硝酸の同位体組成を指標に用いた植物の窒素同化過程解析
Project/Area Number |
22651001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
角皆 潤 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (50313367)
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Keywords | 硝酸 / 同化 / 三酸素同位体組成 / 植物 / アンモニア / 窒素同位体組成 / 笹 / 凍結乾燥 |
Research Abstract |
本研究は、植物の個体内に取り込まれた無機窒素化合物について、その起源や個体内における同化過程を明らかにすることを最終目標としており、このため、表面に付着した無機窒素化合物を完全に除去した上で、植物体内から硝酸イオン(以下、硝酸と表記)等の無機窒素化合物の抽出を行い、各分子の自然同位体組成を定量することを計画した。今年度の実施内容は、以下の通りである。 まず前年度に実施した予備調査の結果に基づいて、北海道大学の雨龍研究林(北海道雨竜郡幌加内町字母子里)をフィールドとして、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの柴田英昭准教授、および本申請者の研究室に所属する大学院生2名と共同で、3ヶ月に一度程度の頻度で、以下の各試料を採取した。また土壌環境に関する各種パラメーターを現地で定量した。 ・同研究林に自生する樹木(トドマツおよびミズナラなど)の葉試料(採取後ただちに硝酸等の無機窒素化合物を抽出) ・樹木周辺の土壌試料(採取後ただちに硝酸等の無機窒素化合物を抽出) ・研究林内の植物試料(クマイザサ、千島笹など) ・研究林内および周辺域の渓流水試料 フィールドで採取した試料は北海道大学の本研究申請者の研究室に移送し、硝酸の安定同位体組成を三酸素同位体組成を含めてすべて定量した。本研究費で雇用する研究支援員が分析を支援し、試料の定量を進めた。そして各植物個体の各部位から抽出した硝酸の同位体組成から、以下の知見を得た。 (1)クマイザサの根から桿の部分に含有される硝酸は大部分が土壌に由来する一方で、葉の部分に含まれる硝酸には、大気に由来する硝酸が最大で50%程度含有されることが明らかになった。 (2)クマイザサの硝酸の窒素安定同位体組成の個体内での分布を活用して、同化反応におけるの同位体分別係数(α)を求めた。 (3)求めた同位体分別係数と個体内における窒素・酸素安定同位体組成の分布から、硝酸の大部分(90%程度か、それ以上)は根から桿において同化されていることが明らかになった。 (4)渓流水中に含有される硝酸の三酸素同位体組成の時間変化から、森林伐採によって大気由来の硝酸も土壌に由来する再生硝酸も、ともに渓流水中の含有量を増加させることが明らかになった。またその流出量の増加は、融雪期に特に顕著であることも明らかになった。
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Research Products
(6 results)