2011 Fiscal Year Annual Research Report
クロロフィル派生物の海洋有機物プールにおける寄与-包括的分析手法による検証
Project/Area Number |
22651003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
濱 健夫 筑波大学, 生命環境系, 教授 (30156385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 茂樹 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60512720)
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Keywords | 海洋溶存態有機物 / 有機炭素プール / 植物プランクトン色素 / 色素派生物 |
Research Abstract |
海洋環境中で植物プランクトンにより生産されるクロロフィルaの物質循環における重要性を明らかにするため、下記の2点に関して研究を行った。 1.クロロフィルaの分解過程を詳細に追跡するため、沿岸自然植物プランクトン群集の培養、分解実験を実施した。静岡県下田市の大浦湾から得た海水試料に栄養塩を添加した後、太陽光下で培養を行い、クロロフィルaを生産させた。その後、暗所に設置し、バクテリアにより分解させた。随時試料を採取し、得られた試料について、全クロロフィル∂派生物濃度と、高速液体クロマトグラフ(HPLC)による個々の派生物濃度を明らかにした。その結果、分解が進むにつれてHPLCにより測定可能な派生物は急速に濃度が減少するのに対し、全派生物濃度の減少は緩やかであった。これは、蛍光を発しない派生物が長期残存していることを示し、有機炭素プールへの一定の寄与を示唆している。 2.研究船「淡青丸」に乗船し、黒潮域から東シナ海にかけた測点において、表層から低層までの、数層にわたり試料を採取した。この試料について、1.と同様に、クロロフィル∂派生物の濃度を測定した。その結果、深度の増加につれて、クロロフィルaからの構造変化の段階が増す傾向が認められ、また蛍光を有しない派生物の割合も増加した。これは、深度の増加と共に、有機物の分解過程が進む事を裏付ける結果である。 これらの結果から、蛍光を有しないクロロフィルa派生物は、比較的長期まで残存し、分解性が低いことが確認された。しかし、炭素ベースで換算した結果、懸濁態有機炭素の構成分としては、数%を占めるのみであった。さらに、溶存態有機炭素プールへの寄与について検討する必要がある。
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Research Products
(4 results)