2011 Fiscal Year Annual Research Report
地域共有資源の開発・利用・保全と環境調和型農林業システムの構築に関する計量分析
Project/Area Number |
22651013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加賀爪 優 京都大学, 農学研究科, 教授 (20101248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鬼木 俊次 国際農林水産研究センター, 社会科学領域, 主任研究員 (60289345)
栗山 浩一 京都大学, 農学研究科, 教授 (50261334)
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Keywords | 退耕奸林 / 生態移民 / 地域共有資源 / 西部大開発 / 環境調和型農林業 / 黄砂飛来 |
Research Abstract |
地球温暖化等の環境問題が顕在化してくる中で、枯渇性の化石燃料に代わる再生性資源として、バイオ燃料が注目されてきた。しかし、世界各地でトウモロコシや砂糖黍、大豆等が大量に燃料生産に振り向けられたため、穀物価格の高騰を招き食料危機を引き起こすことが危惧された。最近では、共有地や耕作放棄地を利用して、稲わら、廃材など非食料原料に基づく第2世代のバイオ燃料生産や退耕還林政策が注目されている。この動きは地球温暖化防止や持続可能な循環型社会への転換に向けた地域共有資源の開発・利用・保全の問題である。本研究はこうした喫緊の課題を受けて、農林業サイドに焦点を当てて地域共有資源の開発・利用・保全の問題を国際的視点から論じることを目的としている。 そのために、平成23年度は以下のように実施した。 地域共有資源の利用・保全プロジェクトとして国際的に注目されている中国の退耕還林政策は、既に第1期が完了して、その後、幾つかの地域では更新され継続されている。そこで、既に完了した第1期の事後的な政策効果について統計情報を収集し、地域ごと年次毎に整理してパネルデータ化することを通じ統計的に加工処理を行った。また、更新して第2期目に入った地域に関しては、農民合作社(中国の農事組合)や土地の請負等を通じて退耕還林実施後の農地や植林地を共有管理する事例およびこの政策に伴って実施されつつある生態移民の展開についても調査を行い、その効果について計量経済分析を行った。 その際、生態移民の展開において農林業活動から生じる面源汚染の程度とその防止策として住民の意向を最大限明示的に組み込んだ環境保全政策のあり方、さらに共有資源の保全活動やバイオ燃料生産に向けたした資源リサイクル活動について実証的に分析した。加えて、資源循環型農林業として既に国際的に各地で展開されている耕畜連携の成功例と問題に直面する事例を日中間で比較検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共有資源の開発・利用・保全政策の典型的事例である中国の退耕還林政策の経済的および環境的効果に関して、綿密な現地調査による実証分析を深められたこと、またその効果を定着させるために補完的に実施されている生態移民政策に関して成功している地域と順調に進展していない地域の問題点を詳細な現地調査により分析し、それなりの帰結を導出しつつあることから、昨年度(2011年度)の当初の研究計画に関して、その実質的な部分が達成されたことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までのところ、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点は特にない。今後の研究の推進方策は、以下のとおりである。これまで、主として、陝西省の各地域および内モンゴル自治区の草原牧畜地帯を中心に現地調査に基ずく実証分析を進めてきた。この帰結をより一般化するために、中国の他の地域および日本の類似する政策対応とを比較することにより、これまでの実証分析結果のインプリケーションを補強する。
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Research Products
(14 results)