2011 Fiscal Year Annual Research Report
超流動ヘリウム4薄膜に浮いたヘリウム3単分子層のナノトライボロジー
Project/Area Number |
22651036
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
檜枝 光憲 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (30372527)
|
Keywords | トライボロジー / 表面・界面物性 / ナノトライボロジー |
Research Abstract |
摩擦現象の理解は基礎・応用研究において極めて重要であるが、ナノスケールでの素過程は明らかになっていない。我々のグループでは、超低温において強い量子現象を示す液体ヘリウムの性質を利用して、超流動ヘリウム4薄膜表面上に浮いたヘリウム3単分子層との界面で起こるナノ摩擦の研究を行った。純粋なヘリウム4及びヘリウム3薄膜については、いくつかの振動基盤実験(ねじれ振り子、水晶マイクロバランス(QCM)、超音波測定など)において、非超流動ヘリウム薄膜のスリップを示唆する実験データが報告されてきたが、混合薄膜については調べられていなかった。我々が行った水晶マイクロバランス(QCM)を用いた研究から、平坦な金基盤上に吸着したある膜厚の^3He-^4He混合薄膜(ヘリウム4の吸着量:37.38μmol/m^2,ヘリウム3の吸着量:7.93μmol/m^2)において、基盤速度が35mm/s以上になると非超流動膜の一部が基盤振動からスリップすることを示すデータを得た。このスリップは、昇温・降温過程の間でヒステリシスを伴っていることから、超流動ヘリウム4薄膜に浮いたヘリウム3単分子層がピニング-ディピニングの機構によりスリップしたと解釈される。また、このスリップが観測されはじめる温度と、超流動転移温度(約0.2K)が近いことは両者の間に何らかの関係がある可能性を意味しており大変に興味深い。これらの結果は、低温物理国際会議(LT26)及び会議論文(Journal of Low Temperature Physics誌に掲載受理)で報告を行った。今後はさらに詳細に研究を進めるために、膜厚、振幅、周波数などを系統的に変化した測定を行い、超流動ヘリウム4薄膜-常流動ヘリウム3単分子層の界面に生じるナノ摩擦の速度依存性、膜構造依存性などについて定量的な議論を行っていく必要がある。
|
Research Products
(1 results)