2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子線多波屈折を利用した単一超微粒子の結晶内ポテンシャル解析法の研究
Project/Area Number |
22651037
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石政 勉 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (10135270)
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Keywords | 電子回折動力学理論 / 多波屈折 / 超微粒子 / プリズム型結晶 |
Research Abstract |
直径1000A以下のいわゆる超微粒子は、光特性、磁気特性、機械的特性、熱特性などに優れ、幅広い分野での応用が期待されている。超微粒子の結晶構造解析は従来、粉末X線回折法によって行なわれてきた。しかし、この方法では多数の微粒子の平均構造に関する情報が得られるだけである。また、個々の微粒子を電子顕微鏡で観察しても結晶構造解析はできない。要するところ、現在の構造解析手法では、単一超微粒子の結晶構造を解析する方法は存在しない。本課題のテーマは、対称的な晶壁面で囲まれた形状をもつ超微粒子を対象として、電子線多波屈折を観察し、そこに含まれる構造情報を引き出す方法について検討することである。研究対象として安定な形状を持つA15型Cr微粒子を選び、以下の実験研究と検討を行なった。(1)超微粒子作製装置の整備(2)電子線を使った単一超微粒子の多波屈折観察(3)プリズム型結晶における電子線回折多波動力学理論の定式化(4)多波屈折シミレーションプログラムの試作(5)単一微粒子の精密構造解析可能性の検討。以下では、その詳細について述べる。30TorrのAr中で純度99.999%のCrを蒸発して、直径約3000A以下の微粒子試料を作製した。A15型微粒子は24個の{211}面で囲まれた形状を持っていた。200keVの電子を[001]方向から入射して観察された回折図形では、各反射が屈折の影響をうけて複雑に分裂していた。特に、210などの8方向には、それぞれ分裂した多数の屈折点が、さらに110など4方向にも屈折点が観察された。また、屈折点の強度や分裂の幅は、本体のBragg反射ごとに異なっていた。これらの観察結果を解釈するために、プリズム型結晶に対する電子回折動力学理論を定式化した。これは、基本的にはよく知られているBethe法の延長であるが、通常の平行平板結晶とは異なって、傾いた入射面と出射面を境界条件とした取り扱いを行なった。この結果、結晶内の周期電位の影響で分裂した多数のBloch波がBragg反射ごとにまとまらずに出射することになる(本報告で多波屈折と呼ぶ現象はこれである。)弾性散乱を仮定し、結晶構造因子(結晶内電位のフーリエ係数)の計算に孤立原子の原子散乱因子を用いた185波動力学シミレーションでは、観察結果の屈折点配置を定量的にも良く説明する計算結果が得られた。しかし、屈折点の強度分布は定性的には似ているものの、定量的には大きく食い違っていた。Debye-Waller因子を考慮し、さらに電位フーリエ係数の虚数部を加えて非弾性散乱を取り入れたシミレーションプログラムを試作したが、強度分布を説明する結果には至らなかった
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Research Products
(2 results)