2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22651079
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上條 俊介 東京大学, 大学院・情報学環, 准教授 (70334357)
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Keywords | アミロイド線維 / アルツハイマー病 / クマリン / globulomer / ファージディスプレイ / SciFinder |
Research Abstract |
タンパク質の機能改変を行うタンパク質工学においては、従来、生化学的研究とインフォマティクス的研究が独立に行われている場合が多い。しかし、タンパク質のメカニズムは非常に複雑であり、メカニズム解明の新たなブレークスルーのためには、実験とインフォマティクスを相乗的に結びつけ新たな発見に導く融合的研究が必要である。今年度では、前年度において明らかになったアミロイドタンパクの凝集を阻害する7残基ペプチドの最適化、すなわち阻害活性に必要な最低限要素の特定を目的とし、3残基及び4残基のランダムライブラリーを新規に構築し、T7ファージディスプレイ法を用いてアミロイド凝集阻害ペプチドの探索を実施した。その結果、神経毒とされるglobulomerの形成に対して3残基及び4残基でも阻害活性を有するペプチドが存在し、特に4残基ペプチドR-F-R-Kは、7残基と同程度に強い阻害活性を有することが判明した。以上の結果から、阻害活性に必要最低限の要素として、アルギニンと疎水性アミノ酸残基、3~4残基の分子サイズであることが結論された。 次に、血液脳関門を通過する低分子医薬候補を見出すことを目的として、コンピューター上での検索システムであるSciFinderを用いて、低分子化合物の検索を実施した。アルギニンを含む入手容易な低分子化合物を探索した結果、Arg-Arg-7-amino-4-trifluoromethylcoumarin(RR-AFC)が見出された。Coumarinはアミロイド線維化阻害剤として既知であったため、RR-AFCはglobulomerと線維の両方を阻害する可能性が期待された。そこで電気泳動及びThT結合アッセイにより阻害活性を解析した結果、予想通り、RR-AFCは、globulomerとアミロイド線維の両方を阻害することが判明した。以上により見出された低分子化合物は、アミロイドの毒性を緩和する薬剤のシードとして期待される。
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