2010 Fiscal Year Annual Research Report
有機合成化学を起点とする細胞内外イディオタイプ分子の新規創製法
Project/Area Number |
22651081
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 克典 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教 (00403098)
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Keywords | 糖鎖 / ペプチド / イディオタイプ / ダイナミック・コンビナトリアルケミストリー / シンセティックバイオロジー / 6π-アザ電子環状反応 / 自己活性化型クリック反応 / SH2ドメイン |
Research Abstract |
本研究は、特定のタンパク質に強く結合する糖鎖リガンド、または特定のタンパク質に選択的に結合するペプチド性イディオタイプを、ダイナミック・コンビナトリアルケミストリー(DCC)と高速有機合成反応を併用して自由自在に創製し、さらにそれら創製分子を用いて機能性生体分子の相互作用を制御することを目的とする。平成22年度では、リン酸化チロシン含有タンパク質に選択的に結合するSH2ドメインイディオタイプの創製を検討した。 すなわち、リン酸基と緩やかに相互作用する、ビスリジン構造とアジド基を有する報告者独自のペプチドに対し、Grb2/SH2ドメインの既知リガンドであるリン酸化環状ペプチドの存在下、種々のアセチレンペプチドライブラリーを共有結合させた(Induced-fit型結合)。この方法により、SH2ドメインの認識配列(pTyr-Val-Asn-Val)に選択的な分子の合成を試みた。この際、共有結合の手法として、報告者が独自に開発した"自己活性化型クリック反応"を活用した。リン酸化環状ペプチドの非存在下でのクリック反応生成物とHPLCを比較検討した結果、リン酸化ペプチド存在下で顕著にピーク強度が向上したペプチドとして、数種類のクリックペプチドを見出した。次いで、これらペプチドを再合成し、リン酸化環状ペプチドに対する解離定数を求めた結果、上記で得られたクリックペプチドは、数mMの比較的高い結合能を示すことが判明した。さらに、EGFRを高発現するA-431癌細胞を用いてシグナル伝達機構への関与を調べた結果、クリックペプチドは(1)細胞内に効率良く導入されること、(2)細胞内でリン酸化Shcタンパク質に選択的に結合すること、(3)A-431癌細胞に選択的な障害活性を示すこと、さらには(4)動物レベルの実験でA-431癌組織を選択的に縮小させることを見出した。このように、報告者の有機合成化学を起点とする新規戦略により、SH-2ドメインのイディオタイプとなるクリックペプチド分子を創製することに成功した。
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Research Products
(31 results)