2011 Fiscal Year Annual Research Report
がん転移の分子機構の解析を目指した糖鎖プライマー法による比較グライコミクス
Project/Area Number |
22651083
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 智典 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (00162454)
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Keywords | 糖鎖 / 糖鎖プライマー / がん細胞 / がんの転移性 / 糖鎖合成遺伝子 / 質量分析 / 糖鎖生合成経路 |
Research Abstract |
癌細胞の転移性に関わる分子として糖鎖が知られている。本申請研究では糖鎖プライマー法を用いて、細胞に発現する糖鎖構造を迅速かつ高感度に分析し、転移性の異なる細胞間で糖鎖構造を比較した。異なる糖鎖生合成経路の基質となる複数の糖鎖プライマーを用いることで、細胞に発現する多様な糖鎖を検出する。転移性に関与する糖鎖の合成遺伝子の発現と糖鎖の認識機能の解析を行うことで、転移に関わる糖鎖に対する「比較グライコミクス」の手法を確立することを目的としている。 骨肉腫細胞では、高転移株と低転移株において糖鎖プライマー法による糖鎖の比較解析を行った。特に、グリコサミノグリカン型の違いは新規な知見であったことから、グリコサミノグリカンの糖鎖構造の解析を行い、生合成経路の特定を行ない、さらに合成酵素の検出を行なった。当該の糖鎖合成遺伝子のノックダウンアッセイを行い、細胞の運動能への影響を明らかにした。また、肺腺がんA549細胞から得られた糖鎖プライマー由来の硫酸化糖鎖を脱硫酸化した構造は、分子量の相当する中性糖と異なる骨格構造は異なっていることが明らかとなった。高転移性のA549細胞において硫酸基転移酵素遺伝子をsiRNAでノックダウンしたところ、細胞運動能の低下が見られ、硫酸化糖鎖がヒト肺腺がん細胞の転移性に関与していることが示された。 以上のように、糖鎖プライマー法により細胞の運動性に関与する糖鎖構造を解明した。さらに、糖鎖の合成遺伝子をノックダウンすることで細胞の運動性を抑制することが可能であった。これにより、糖鎖プライマー法を基盤とした、癌転移に関わる糖鎖の検出が可能であることを示した。
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Research Products
(5 results)