2011 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカルシステム生物学手法による細胞遊走シグナルの普遍性と多様性解析
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22651084
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井本 正哉 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60213253)
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Keywords | ケミカルバイオロジー / システム生物学 / 細胞遊走 / パスウエイ解析 / リポキシゲナーゼ |
Research Abstract |
本研究は、ケミカルシステムバイオロジーの手法による細胞遊走制御機構の普遍性と多様性の解明を目的としている。これまでに,様々な細胞遊走のシグナル伝達阻害剤の感受性を比較することで遊走制御機構の普遍性及び多様性に関わる分子群を予測し,さらにそのパスウェイ関係を解析する為に必要なシグナル伝達描画方法を構築した. 平成23年度は、昨年度と同様の手法を用いてEGF刺激で遊走する3種類の細胞(ヒト扁平上皮がん由来A431細胞、ヒト食道がん由来EC109細胞、ヒト甲状腺がん由来TT細胞)において、EGF刺激に応答してリン酸化及び発現上昇する新たな9種類の分子に対し、16種類のシグナル伝達阻害剤が与える影響を評価し、その結果から描画できる各細胞のパスウェイ構造を比較した。その結果、MAPK経路やPI3K/Akt経路、JNK/cJun経路などは3細胞において普遍的であるが、他の多くのパスウェイが各細胞に特徴的に存在することが示唆された。特に、5-lipoxygenase/LTC4/CysLT1経路が、TT細胞ではMAPK経路を制御するがPI3K/Akt経路には影響しない一方でEC109細胞では逆にPI3K/Akt経路のみを制御するという結果は、これまでの研究からは予期出来ない興味深い結果であった。 さらに本年度の結果から、TT細胞ではROCK下流の多くの分子が細胞遊走を正に制御しているが、EC109細胞やA431細胞ではそのような制御が見られず、代わりにGSK3下流の多くの分子が細胞遊走を制御していることが強く示唆された。即ち本年度で得られた結果は、EGFが引き起こす細胞遊走においてCysLT1、ROCK、GSK3などの分子が持つ役割の普遍性と多様性を解明する為の大きな手がかりとなり、本研究の目的を達成するにあたり重要な意義を持つものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り3種類のがん細胞での遊走パスウエイの描画が進んでおり,そのなかから多様性を示す情報伝達経路も明らかになりつつある
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Strategy for Future Research Activity |
遊走シグナル伝達の普遍性と多様性を解明するため,ケミカルゲノミクスの手法を用いて様々ながん細胞の遊走制御機構をクラスター解析し,その結果からヒト扁平上皮がん由来A431細胞およびヒト甲状腺がん由来TT細胞さらにヒト食道がん由来EC109細胞を用いてパスウェイ解析を行う.さらにこれら三つのがん細胞で比較することでがん細胞遊走制御機構の多様性と普遍性の解明を試みる.
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Research Products
(3 results)