2011 Fiscal Year Annual Research Report
アラビア語資料とユダヤ諸語資料に見る聖書中の人物イメージの伝承と発展
Project/Area Number |
22651089
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高階 美行 大阪大学, 世界言語研究センター, 教授 (70144540)
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Keywords | 地域研究 / 外国文学 / 西アジア / ユダヤ諸語 |
Research Abstract |
1.研究の目的に照らして (1)本研究は、宗教文化が異なるために研究上も異なる研究者が対象としてきた聖書中の主要な人物のイメージに関する伝承と発展のプロセスを、アラブ・イスラーム文化ではアラビア語文献を、ユダヤ文化ではユダヤ諸語文献を使用しつつ分析し、インタラクティブな視点で伝承の成立、相互影響、発展の視点から跡付けることを目的としている。 (2)このために、全体としては、平成22年度に発表した論文(アブラハムの妻ハガルと子イシュマエルをめぐる伝承)で論じた視点、つまり、最初に成立したユダヤ側伝承の内容は、イスラーム時代のかなり初期にアラビア側に伝わったとの仮説のもとに、他の人物に関わる伝承のテキスト分析を進めた。 2.研究実施計画に照らして (1)聖書中のHagarとIshmael以外の人物の特定:分析対象としての人物の特定を継続して行った。 (2)ユダヤ諸語による古典文献資料からの情報抽出;関係する先行研究文献の収集と分析を行った。中でも、広範なユダヤ側文献より関係情報をまとめているが索引が欠如するL.Ginzberg(1909-36);The Legends of the Jews.6vols.を対象に、研究補助によりキーワードの抽出作業(前年度は全体の4分の1)を継続して残る4分の3を完了した。これはキーワードのアルファベット順配列で、即座に該当頁と行が参照できるデータとして整形した。このデータは、平成24年度の報告書には印刷掲載する予定である。 (3)アラブ・イスラム側古典文献からの情報抽出:対象文献は平成22年度で確定している。 (4)アラブ・パレスチナ側民話資料とユダヤ現代民話資料の調査:資料収集のみに終わり分析にまで進むことはできなかった。 (5)両文化における相互影響と発展の分析:今年度は上記(2)の作業完了に集中したため、中間分析を論考として発表するまでに至らなかった。(2)の成果とともに、報告書にまとめる予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実施計画(3)「アラブ・パレスチナ側民話資料とユダヤ現代民話資料の調査」が遅れており、アラブ側とユダヤ諸語側ともに、本研究で現代民話までを全面的な対象とするのは困難となりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究目的を変更する必要はないと判断している。しかし、分析対象とする時代範囲において、ユダヤ諸語とアラビア語方言における現代民話の分析を除外することにより、研究課題の中核である「インタラクティブな視点での分析」は実現できると判断している。
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