2011 Fiscal Year Annual Research Report
空間と形に感応する媒体として身体を解明することから、知の成立機序を捉え直す試み
Project/Area Number |
22652003
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
栗原 隆 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (30170088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 尚武 鳥取環境大学, 大学院・環境情報学研究科, 教授 (10011305)
辻本 早苗 有明教育芸術短期大学, 教授 (20155378)
細田 あや子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (00323949)
白井 述 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (50554367)
青柳 かおる 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20422496)
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Keywords | 空間 / 身体 / 身体感覚 / 気分 / 感応 / 共感 / 人間学 / 感覚知 |
Research Abstract |
かつて、「気分」を原理として想定されたうえで、哲学的人間学の構築が模索されたことがあったが、「気分」はややもすると主観的でかつ個別的であって、曖昧模糊とじた移ろいやすいものという印象を払拭しきれない。そこで、「気分(Stimmung)」を「感応」と捉え返すとともに、身体を周囲の空間に感応する装置と見なすことを通して、知の成立機序を問うことを、この共同研究は追求した。これは、理性知が脳の働きによってもたらされるという一般の認識とは全く位相を異にするものであって、身体に、人間と周囲の世界とを、一体化しながら知を拓く働きを見定めることを通して、むしろ、主観性や個別性を脱却する理路を見定めることができた。すなわち、「共感」や「良心」、「即興」や「感興」、「陶酔」や「感動」は、「身体」を抜きには成り立たないことについて、明らかにすることができた。 こうした一連の研究は、2011年4月に、栗原隆(編)『共感と感応--人間学の新たな地平』(東北大学出版会、全381頁)としてまとめられて公刊された。 研究会として、2011年9月3日(土)、新潟大学駅南キャンパス「ときめいと」にて、「身体と感興」と題された公開研究会を開催、共同研究の成果を公開した。栗原隆は「同一性と連続性--シェリングの同一哲学に対する剽窃疑惑をめぐって」を発表、また辻元早苗が、前年の9月と12月に、東京で行われた二つのパフォーマンスを編集した映像を、解説を加えながら投影、東日本大震災からの復興を宰領する女神が降臨するかのような映像で、大きな感動を巻き起こした。 一連の成果は、代表者のもう一つの、科研費(基盤(A)による共同研究との相乗効果がもたらされたことによって、2012年3月には、『世界の感覚と生の気分』(ナカニシヤ出版、全290頁)に反映されることになった。こうした身体感覚を通した知は、近代合理主義の危機ともいえる今日にあって、自然や空間的世界と宥和的に一つになる、新たな知の在り方を暗示するものだと信じる。
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Research Products
(16 results)