2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22652013
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀田 真紀子 北海道大学, 大学院・メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (90261346)
|
Keywords | 非暴力主義 / アート / 社会変革 / 脱中心主義 / 多中心主義 / なりたい世界に自分がなる / 予見的政治 / 公共的幸福 |
Research Abstract |
春から夏にかけてのネットや文献をつかった調査を踏まえ、Art+Activism=Public Sphereという英語論文の執筆をはじめた。これはまだ未公開だが、この内容をもとに、今年度、Art in Societyという国際学会で、研究発表をし、論文執筆をする申し込みをその要約を送っておこない、すでに査読を通って、受諾されている。こうした結果を踏まえながら、再び9月6日から22日までサンフランシスコに渡り、公共領域をテーマに活動を続けるアーティスト、スクワットしながらコミュニティ・アートスペースをつくる活動家、メッセージ性の強い住民参加型の制作をつづける壁画家、DIY自転車ショップのオーナー、などに会って聞き取り調査。および、Park(ing)Dayという、お金を払ってパーキングスペースを借りて、そこを1日、公園に変えるアクティビズムの参与観察を重なった。帰国後その分析をするうちに、草の根社会運動の側から、アートを内的に必要とする事情が新たにみえてきた。一言でいえば、非暴力主義を厳密にとって、他者や社会を特定の理念にしたがって外圧的な力で形作る態度を一切放棄し、物理的暴力のみならず、精神的に教導したり、操作することも一切放棄したとき、社会を変える権力として私たちに残されているのは、「あなたが見たい世界にあなた自身がなれ」というガンジーの言葉にみられるような、日常生活に根ざした、変革実践と、その蓄積を背景にした、私たちが私たち自身の存在やヴィジョンの体現。その表現の説得性から発する、プレゼンスの力しかないということである。昨今のアクティビズムにみられる脱中心性、多中心性もここから帰結するし、社会変革がアートになる根拠もここにある。そのような洞察を、3月に「草の根からの社会改革-ヨーゼフ・ボイスの社会彫刻の概念を手がかりにして」という論文にまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査とその分析、文献調査を重ねるうちに、アートと社会の関連性といった茫漠とした問題設定のなかから、私自身の問題意識と、時代の要請に即した重要なポイントが、厳格にとられた非暴力主義による社会変革がもつ、表現性への志向というかたちで、焦点をむすびはじめたからである。非暴力主義や公表論文の数はまだ少ないが、英語論文1本をすでに完成させ、あとは学会発表と、その際の応答を踏まえた総括、同学会誌への投稿を7月までには行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
データーは、音声、ビデオなど膨大にとってあるが、その分析と総括がやや遅れている。これを、早急に、暴力の代替案としての表現性、日常生活のおわりなき変革、予示的政治といったキーワードに焦点をしぼりながら、まとめていく。この過程を迅速化するために、上述の学会発表、論文投稿の他に、もう一件、秋に締め切りのある論文の執筆を行う予定である。
|
Research Products
(1 results)