2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22652015
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
穴山 朝子 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化創成科学研究科, 研究院研究員 (20303000)
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Keywords | ドイツ / ナチズム / 帝国文化院 / 芸術家 / 芸術政策 / 文化政策 / 宣伝省 / 知識人 |
Research Abstract |
本研究は、ドイツのナチズムにおける「芸術」政策および広義の「文化」政策について、先行研究では見落とされがちな二側面からのアプローチを試みる。 すなわち、1、ナチ時代の芸術文化に関する個々の政策立案の経緯と芸術家組織「帝国文化院」を中心とする諸制度の実態の解明、2、ナチ政権下の芸術家と知識人層、大衆など被支配層の動向とその心性、国民の文化享受の諸相を詳らかにすること、の二点を同時代文献史料を用いて読み解こうとするものである。 平成22年度は、主として1の側面に比重を置き、これまで収集したドイツ連邦共和国所蔵の公文書と各種公機関の発行物等の収集と分析とを行った。調査研究の結果、とくに文化・芸術領域を対象とするナチ政権の諸政策が、ヴァイマル共和国の職能的芸術家の要求に応えていく体制初期、および国民の支持や同意獲得を狙った体制中間期、さらに第二次世界大戦に突入する1939年以後の戦時体制、そして敗戦を目前とした戦争末期などの諸段階に対応し変化していく過程を析出した。なお、これらの諸段階の時期区分に関しては、さらなる管連史料の分析と検討が必要である。 現時点における研究成果と史料分析の過程は、雑誌論文への掲載発表のみならず、学際的シンポジウムにおいても公表し、諸外国からの研究者および芸術諸学の専門家との濃厚な意見交換により様々な批判や指摘を受けた。上記の成果は、次年度の研究を進展させることにより、さらに洗練された論点と結論に昇華していくことが望まれる。同時に、20世紀におけるヨーロッパ現代史にとどまらず、見直しを図られている現代日本の文化行政、文化政策へのあらたな展望を提示する可能性においても意義あるものと考えられる。
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