2012 Fiscal Year Annual Research Report
戦時検閲下で、国民の心性はどう表象されたか―昭和期女性文学の対抗戦略―
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22652024
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
根岸 泰子 岐阜大学, 教育学部, 教授 (20180698)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 戦時下文学研究 |
Research Abstract |
平成24年度(本研究最終年度)は、年度当初の「研究実施計画」(交付申請書)に基づき、①基礎調査および分析、②分析(検閲・言論統制関連、文学テクスト読解)、③成果発表、の各項目ごとに一定の成果を上げた。 「①基礎調査および分析」では、前年度に引き続き堤千代テクストの確定作業およびその演劇・映画化における検閲の個別ケースの調査・分析、堤テクストの読者層(日の出』および婦人雑誌読者、軍人)分析を継続した。今年度は堤テクストの読者層を決定することになった通俗作家出発期のテクスト「小指」とその周辺に焦点を絞り、演劇へのジャンル移行、女性読者の反応等についても考察を行った(③学会発表)。また関係者へのインタビューによって、戦後の堤千代の動向についての情報を得ることができた。 「②分析(検閲・言論統制関連、文学テクスト読解)」では、昭和10年代初頭から同15年あたりまでの文学(小説)・歌謡曲・演劇・映画に対する検閲について『出版警察報』および『演芸画報』、『映画検閲時報』等の一次資料および先行研究の調査により、「小指」等の初期作品(軍人をモチーフとする)を取り巻く新派など演劇界の実態および演劇全体に対する検閲状況を中心に確認することができた(③学会発表)。またナラトロジーをはじめとするテクスト分析によって、作品の「情感」を析出しそこに検閲下の大衆娯楽テクストの「抵抗」戦略を読み取るとともに、戦時下における自由主義・功利主義的イデオロギー表象の析出についても一定の成果を得ている(③論文)。以上の分析にあたっては、今年度に新規に生活文化論的な方法を援用した成果として、国家総動員法により再編されていく時代状況下の都市住民のうちの自由主義的指向性と兵士への共感の癒着という特殊な心的状況をこれまでより明確にとらえられたと考える。 「③成果発表」については学会発表1件、論文発表1件を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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