2011 Fiscal Year Annual Research Report
法的・規範的実践の社会的構造-フィールド観察とデモンストレーションを通じて-
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22653001
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
樫村 志郎 神戸大学, 法学研究科, 教授 (40114433)
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Keywords | 基礎法学 / 法社会学 / エスノメソドロジー / 社会規範 / 法行動 / 公共場面 / 秩序性 / 身体規範 |
Research Abstract |
2011年度には,公共的通行場面の撮影を通じて収集された通行/歩行に関する規範追従場面の分析のための視角を発展させた.その成果の一部は,「法における共通理解の達成と維持」として心理学者と言語学者との共著の一部として発表する(印刷中,ひつじ書房2012年刊行予定).2011年度には,その視角とデータにもとづく分析を継続し,一部を日本法社会学会学術大会(2011年5月7日・東京大学)において発表することができた.それらの研究を基礎として,言語を用いない身体的交流に関する一著作(D.Goode A World Without Words)の詳細な検討と翻訳を行ない,2011年10月に著者のもとを訪問して知見とその解釈を深めた.本書もに翻訳書として公表する予定である(新曜社2012年刊行予定).この発展として,ある特別支援学校の校内生活場面の観察を行ない,貴重な追加的知見を得た.これらを通じて,公共場面における非言語的秩序の理論研究を深化させ,(1)一瞥(a glance)により実現される秩序性,(2)1個の身体ではなく2個の身体を単位(組)とする秩序化方法,への着目という視点を得,(3)それらの方法の具現としての「連れ立って歩く」という現象,および(4)その論理的発展としての「列をつくる」という現象について,さらに研究を進め,その経過をホームページ等で閲覧できるようにした.これらを通じて,Albert Robillard(ハワイ大学教授)との交流を継続するとともに,アメリカの指導的な秩序研究者の一人である,K.Liberman(オレゴン大学教授)等との知見の交流ももつことができた.犯罪を中心とする規範逸脱現象については,世界犯罪学会議(2011年8月・神戸),修復的正義と人権教育に関する国際会議(2012年3月・台湾)で準備的成果を公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理論的基盤の研究は当初の予定をこえて進展し,成果が順調に公表されている.デモンストレーションも予定通り実施し,データを得ている.国際的研究者との交流が予想以上に進展している.公共場面での観察は,撮影の制約から,ノートテイキングに依存することが多くなったが,すでに十分なデータは得ているので問題は少ない.
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Strategy for Future Research Activity |
公共場面における実効的な規範追従現象について,より論理的・体系的なまとめ方を探求する.撮影機材の小型化,軽量化が著しいので,固定視点の撮影だけでなく,肩乗せカメラ等を活用したデータ収集も試みる.撮影にかかるプライバシー保護のルールについては,諸外国の研究例も参考に,継続して情報収集につとめつつ検討していく.
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