2011 Fiscal Year Annual Research Report
物・財産・権利と帰属関係-パンデクテン体系を超えて「物の法」を展望する
Project/Area Number |
22653009
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 克己 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20013021)
|
Keywords | 財 / 物 / 帰属関係 / 知的財産 / 人体派生物 / 物のパブリシティ / 競争利益 / 環境利益 |
Research Abstract |
初年度にすでに日仏物権法セミナー(パリ)において報告の機会を得るなど、予定よりも早いスピードで研究活動が展開していることを報告した。今年度は、第2回目の日仏物権法セミナーが札幌で開催された。フランスから5名の研究者の参加を得て、活発な理論交流が展開され、私は、総括報告を担当した。昨年度は「帰属関係」をテーマとしたが、今年度は、帰属関係に解消できない物権関係(管理や占有)についても、理論的考察を行うことができた。昨年度と本年度の2本の報告は、フランスの「比較立法協会」から仏文で出版される予定である。なお、このセミナーで報告を担当した他の日本人研究者(金山直樹、片山直也、森田宏樹、平野裕之等)との間で研究会が組織され、数回にわたって集中的な議論の機会を持つことができた(慶應義塾大学にて)。これも、本萌芽研究の研究活動にとって有益であった。他方、各論的な課題として、精子・卵子を初めとする人体派生物の法的地位の検討を開始し、学会報告を行った(ジェンダー法学会。2011年12月)。また、消費者法領域での集合利益論についても取り組み、学会シンポジウムでコメントを担当した(消費者法学会。2011年11月)。さらに、総論的な理論課題については、京都大学の学術創成研究会に招かれて「権利・利益・帰属-『財の法』の基礎理論構築に向けての一試論」と題する報告を行った(2012年3月)。この報告においては、ベルギーの法哲学者フランソワ・オストの理論を手がかりとして従来手薄な利益論に接近し、権利との関係について理論的に得るものがあった。また、帰属についても、抽象的帰属と具体的帰属を区別すべきことを示すことができた。多くの理論的収穫があったといってよい。本萌芽研究の研究活動は、予想以上に順調に展開している。来年度は最終年度であるが、各論的作業(身体論、環境利益論を考えている)と総論的作業を並行して進め、まとめにつなげたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
フランスとの理論交流については、2回にわたる物権法セミナーの形で、計画よりも多くの研究者と深い議論を行うことができた。ここで行った「財の多様化と帰属関係」「総括」の2報告(フランス語)は、本研究の課題に大きな意味があった。国内でも、学会等での検討の機会を3回得ることができた。とりわけ、京都大学学術創成研究会における「権利・利益・帰属」と題する総論的報告において、大きな理論的進展を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画は順調に進捗しており、問題点はない。それゆえ、研究計画の変更はない。3年計画の最終年度に入るので、まとめを展望した理論活動に重点をおきたい。そのためには、今年度京都大学学術創成研究会において行った「権利・利益・帰属」と題する報告で示した総論的理論展開を深める作業を中心にとして研究活動を実施することが有効と思われる。
|
Research Products
(14 results)