2012 Fiscal Year Annual Research Report
政治哲学と憲法学の対話を通じた「新しい権利」論の可能性に関する萌芽的研究
Project/Area Number |
22653016
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
飯田 文雄 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70184356)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 権利論 / ロールズ / キムリッカ / ナスバウム / 共生社会 / ヤング |
Research Abstract |
本研究の目的は、近年共生社会論の台頭と共に提起されつつある「新しい権利」論に関して、政治哲学と憲法学の知見を統合し、新しい分析装置を開発することにある。そのため、本年度は、環境問題や生命倫理問題などの社会的争点化に伴って提起された権利である、子供や胎児・動物等の諸権利を採り上げて、そこにおける憲法・政治哲学の議論を比較検討する、以下の研究を行った。 (1)本研究ではまず、憲法学的・政治哲学的な権利論の双方における、子供や胎児等の諸権利を巡る近年の先行研究を幅広く収集・分析し、そこでの議論を、両者が展開する成人の権利論などをも踏まえつつ比較することで、両者の共通性や差異について多面的な分析を行った。その結果、①胎児に一定の権利主体性を認める議論は、政治哲学に特徴的な議論としての性格が強く、憲法学においては必ずしもそれと同様の関心を集めるに至っていない、②他方、子供の権利理論は、憲法学・政治哲学の双方で近年急速な発展を遂げており、この論点を巡って両者の交流も開始されつつある、等の重要な知見が得られた。 (2)更に本研究では、憲法学的・政治哲学的な権利論の双方における、動物の諸権利を巡る近年の先行研究を幅広く収集・分析し、そこでの議論を、両者の人間の権利論などをも踏まえつつ比較対照することで、両者の共通性や差異について多面的な分析を行った。その結果、①憲法学における動物の権利論は、人間と比した動物の政治的・道徳的劣位を前提とした上で、単なる無生物的な物質と区別される動物の固有利益擁護を指向する傾向が強い、②他方政治哲学においては、動物をむしろ人間とより連続的な存在と把握した上で、人間の権利理論がどこまで動物に類推可能であるかを考察する傾向が強い、等の重要な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(1 results)