2011 Fiscal Year Annual Research Report
伝統的専門職養成システムにおける学校教育と資格制度の影響・効用に関する研究
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22653058
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Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
佐藤 直由 東北文化学園大学, 大学院・健康社会システム研究科, 教授 (00125569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪股 歳之 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助教 (60436178)
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Keywords | 伝統的専門職 / 専門職養成 / 学校教育 / 職業資格 |
Research Abstract |
平成23年度は、前年度に引き続き主に酒類製造業に着目して、伝統的専門職者の就業環境の変化、および伝統的専門職従事者の入職経路、入職後の職業経歴などについての検討を行った。本研究で伝統的専門職と呼ぶのは、職業分類上では技能職に分類される職種であり、その多くは世襲や徒弟制などによって選抜や教育が行われ、学校教育や職業資格制度の発展とは無関係にその養成システムが構築されてきた。しかし、それらの職業を取り巻く環境は大きく変化しつつあり、これまでの調査研究から得られた知見は以下の通りである。 酒造工程従事者の技術継承のプロセスにおいて、長きに渡って重要な役割を果たしてきているのが地縁を基盤として組織された杜氏組合であり、彼らの技術継承を個人間の問題としてのみならず、組織的な側面から検討することが有効であることが示唆されたが、彼らが直面する現代的な課題は何よりもまず、季節雇用従事者数そのものの減少、入職者数の減少、高齢化という事態である。そしてそれは、農業従事者間での新規入職者の確保と、酒造工程従事者間での次世代杜氏の養成がいずれも機能しづらい状況を生み出した。この課題の解決に向けて、酒造会社では機械化を進めるとともに、製造工程に従事する者を正社員として通年で雇用することで醸造技術を社内に保有しようとしている。こうした正社員化の動きは杜氏組合が目指してきた待遇改善の理想型のひとつである。しかし、製造工程従事者の社員化は、杜氏組合内部でのヒトとワザの循環における機能不全を深刻化させるとともに、組合自体の存在意義を失わせるという自己矛盾も生じさせている。こうした状況のなか、杜氏組合の多くは、杜氏資格の審査、授与機関としての性格を強化している面もある。杜氏の職業資格化や杜氏という称号のブランド化が新たな機能として発現していくのかが今後の一つの問題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災への対応により、本務における学事日程の1か月遅れ開始と夏季休業の短縮、被災建物の修復等があり、当初の調査計画を大幅に変更して実施した。そのため調査資料の整理、インタビュー調査の記録起こしを予定通り進めることができなかった。次年度の早期に計画の遅れを取り戻す作業を実行する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は研究計画の最終年度であり、研究計画に示した通り遂行し、研究の成果を明らかにするが、「11.現在までの達成度」の自己点検・評価に述べたように震災対応による計画の遅れがあり、本年度の早期に残した作業に取り組む。その作業と並行しつつ本年度の研究課題を遂行し、研究成果による新たな知見を公表し、研究の深化を図る。
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Research Products
(1 results)