2011 Fiscal Year Annual Research Report
出産・育児体験ディスコースに見る女性の意識と社会・文化環境:日英米比較研究
Project/Area Number |
22653060
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
秦 かおり 立教大学, 外国語学部, 講師 (50287801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井出 里咲子 筑波大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (80344844)
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Keywords | ナラティブ研究 / 日本人女性 / 出産・育児体験談 / 語用論 / 言語人類学 / 女性とことば / 社会言語学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、子どもを産み育てやすい女性あるいは社会の意識環境を模索し、一つの社会的目標達成のために、多分野の研究者が連携するモデルケースを示す事である。本年度は三つの柱(海外でのインタビュー調査によるデータ収集と追跡調査、プロジェクトチームによるデータの分析、考察と研究成果発表、データベースの段階的作成)を中心とした研究実施計画を遂行した。 第一に、インタビュー調査は英国在住英国人女性14名、英国在住日本人女性8名(昨年度追跡調査)、国内調査2名の計24名に調査を実施した。当初は海外調査先として米国も予定していたが、東日本大震災の影響により調査コーディネート期間に予算が確定せず、予算確保が保証出来なかったため、米国調査は2012年度に順延した。 第二のプロジェクトチームによる分析考察・成果発表については、研究会を重ねた上、2011年6月に秦が言語と人間研究会(於:立教大学)にて発表、7月にチームで国際語用論学会(於:英国マンチェスター)にてパネル発表を行った(佐藤彰大阪大学准教授と合同企画)。ここでは岡本・秦は地域性(地域共同体の社会文化的規範が女性の意識環境に与える影響)を中心に発表、井出はインタビュー方法論について考察、その適切性を検証した。また、岡本・秦はインタビューナラティブにおけるcompleted-uncompleted storiesという分析概念を新しく考案・導入し、9月の社会言語科学会(於:龍谷大学)、2012年1月の話し言葉の言語学研究会(於:慶応義塾大学)、同2月の筑波大学大学院招待レクチャーにおいて発表した。 第三に調査結果の電子処理については、英国人女性に行ったインタビューのうち、8名分をスクリプト化及び電子処理を終了した。 以上、本年度の研究実施計画は、予算の都合上2012年度に順延した米国調査を除き、全て計画通り遂行した事を報告する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画以上に分析・考察が進み、実証に基づく新たな概念(completed/uncompleted stories)の確立、発表に至った。計画していた米国調査を2012年度に順延させる変更があったが、その分2012年度に企画していた英国調査のうち、本年度に実施出来るインタビュー調査を前倒して遂行したため、海外調査においては順調と判断する。従って、総合評価として「(1)当初の計画以上に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は(1)海外調査、(2)国内追加調査、(3)データベース化という当初の計画に加えて、(4)研究成果を報告する書籍の出版を行う。(1)は2012年度に順延した米国調査を井出・岡本が行い、日米英のデータを揃え分析・考察する。(2)の国内調査に関しては、殊に東日本大震災後の育児を取り巻く環境の変化が女性の意識環境にどう影響を与えているかも追加課題とする。(3)は公開の範囲とタグの設定などの最終的な調整を行う。(4)は佐藤彰大阪大学准教授と秦の共編著でナラティブ研究に関する書籍をひつじ書房より出版する事が決定しており、そのプロセスを蕭々と進めていきたい。
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Research Products
(10 results)