2010 Fiscal Year Annual Research Report
秩序問題への学際的アプローチ-認知的制約と社会ネットワーク構造の効果の解明
Project/Area Number |
22653071
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 伸幸 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (80333582)
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Keywords | 社会的交換 / 協力行動 / 評判 / 適応 |
Research Abstract |
人類は、血縁関係を超えた大規模な集団で社会秩序(相互協力状態)を達成可能な唯一の種である。なぜそのようなことが可能なのかは、社会科学の根本問題であり、近年は生物学でも注目を集めている問題である。これまでの数多くの理論研究と実証研究は、この問題に対して複数の回答を提案してきたが、それらの回答の間に整合性はない。本研究はこの問題に対し、意図せざる結果としての規範の実効化により社会秩序が達成されるという新たな仮説を提示する。この仮説は、現時点では理論的に可能であり、かつ実証データとも合致する唯一の説明原理である。しかし、そのことは必ずしもこの仮説が正しいことを意味しない。本研究は、数理解析とシミュレーションを用いた理論研究と、実験室実験を用いた実証研究を相互補完的に用いることで、この仮説の妥当性の検証を行い、秩序問題がどこまで説明可能かを明らかにすることを目的とする。 22年度は、以下のことが明らかになった。まず、理論的検討により、社会秩序の成立は別なドメインとの連結により可能になること、更に連結メカニズムとしては数理生物学で標準的に用いられているランダムマッチングは有効ではなく、社会科学において提唱されている選択的プレイのみが有効であることが示された。また、予備実験により、社会秩序維持のためのサンクションとしては個人が罰を行使するメカニズムが最も効率が良いが、個人罰を行使する者の評判は悪く、適応的とは言えないことが示唆された。なぜこのような行動が見られるのかについての検討は課題として残された。
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Research Products
(8 results)