2011 Fiscal Year Annual Research Report
秩序問題への学際的アプローチ-認知的制約と社会ネットワーク構造の効果の解明
Project/Area Number |
22653071
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 伸幸 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (80333582)
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Keywords | 社会的交換 / 適応 / 社会的ジレンマ |
Research Abstract |
人類は、血縁関係を超えた大規模な集団で社会秩序(相互協力状態)を達成可能な唯一の種である。なぜそのようなことが可能なのかは、社会科学の根本問題であり、近年は生物学でも注目を集めている問題である。これまでの数多くの理論研究と実証研究は、この問題に対して複数の回答を提案してきたが、その中で代表的な答えの一つが協力者に報酬を与えたり非協力者に罰を与えたりするサンクションである。しかし、サンクションはそれ自体が公共財であり、そのコスト負担を巡って二次のジレンマ問題を引き起こすことも同時に知られている。本研究は、サンクション行使は各個人にとっては非適応的であるという二次のジレンマ問題が意図せざる結果として解決される可能性を探るものである。 23年度は、サンクション行使者が集団のリーダーとして選ばれる可能性を検討する大規模な実験室実験を行った。実験で参加者は、まずサンクションステージ付きの社会的ジレンマを行い、その後の第2ゲームでのリーダーを投票により決定した。第2ゲームとしては複数の種類を用意し、状況の特性とそれに応じて望まれるリーダーの特性を条件として操作した。その結果、サンクション行使者は総じてあまり人気がなく、全体ではサンクション非行使者の方がリーダーとして選ばれたが、最初の社会ジレンマで協力した参加者は、公正な人がリーダーとして望まれる状況ではサンクション非行使者よりも行使者を選ぶことが示唆された。このことは、サンクションの行使は意図せざる結果として公正さが必要なリーダーに選択されるために適応的となる可能性を示している。
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Research Products
(6 results)