2010 Fiscal Year Annual Research Report
特別支援教育における発達障害児の対人関係構築に及ぼす「笑いの力」の心理的解明
Project/Area Number |
22653075
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 真理 東北大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (70274412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 大輔 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 教育研究支援者 (70455814)
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Keywords | 発達障害 / 特別支援教育 / 対人関係 / 笑い / ユーモア |
Research Abstract |
目的:場における笑いやユーモアは、仲間意識を高めたり場の緊張を緩和するなどの効果があり(森田、2008)、対人的相互反応における質的障害が指摘されている自閉性スペクトラム障害(以下、ASD)者の対人的やりとりを促進する糸口になる可能性が考えられる。本研究は、共生社会の礎となる特別支援教育の推進をするにあたり、発達障害児と周囲のひととの対人関係を構築するために、「笑い」や「ユーモア」が果たす役割について実証的検討を行うことを目的する。 具体的内容:ASD児において、どのような事象に対して「ユーモア」を感じ「笑い」を表出するのか、その特性に関する基礎的研究を遂行し、「ユーモア」に対する評価的理解(認知的側面)と「笑い」の表出(情動的側面)の特性を解明する。そのために、(1)言語的やりとりを中心としたユーモア(言語・漫才)刺激と(2)視覚的補助要素を含んだユーモア(視覚・コント)刺激を用いて、以下の3つの側面から検討をすすめた。 (1)ASD者におけるユーモア刺激の視聴時の視線の特性について検討した。 (2)視覚・コント刺激を用いて,ASD者が刺激中の対人的やりとりおよびリズムに対してどのような面白さを感じているのか,情動表出の側面から検討した。 (3)ASD者がどのようにユーモアを体験するのか、評価的側面より検討した。 これらのうち、上記(1)の課題について、(1)(2)(3)の観点から分析を行った。 結果:小中学生のASD者は「対人的やりとり」における情動表出とユーモア体験の認識が一致していることが明らかとなった。非ASD者および高校生以上のASD者において,同様の傾向が示されなかったことの背景には,実験室の状況や検査者の存在などの社会的な文脈が情動表出に影響した可能性が考えられる。このことから,ユーモアを体験する状況における相手との関係性の中で表出される笑いの特性について,今後さらに検討する必要性が示唆された。また、ASD者のユーモア刺激における視覚情報の入力への特異性が認められた。 研究成果の公表:23年度日本特殊教育学会において発表を行った。
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Research Products
(3 results)